トヨタ自動車がモデルベース開発(MBD)の自動化に力を入れている。MBDツールベンダーの米MathWorks(マスワークス)と協力し、工程間の手作業を可能な限り排除することで、車載システムを一気通貫で開発できる体制を目指す。
MBDは、実機を使わずに、コンピューターシミュレーションによって車載システムを効率的に開発する手法だ。カーボンニュートラル(炭素中立)やCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応など、クルマの開発負担が増大する中で、その重要性が年々高まっている。2021年7月には国内の自動車メーカー、部品メーカー10社によるMBDの普及、促進組織「MBD推進センター(JAMBE)」が発足するなど、取り組みが活発化している。
通常、MBDでは「モデル作成」「モデル検証(シミュレーション)」「コード生成」「コード検証」といった複数の工程を踏む。しかし、「工程間の“つなぎ”の部分では、手作業が入ることが多い」(マスワークス日本法人インダストリーマーケティング部オートモーティブインダストリーマネージャーの市河純一氏)。
例えば、検証に必要なテストシナリオを作ったり、検証結果を評価して次の工程に進むことを許可したりする部分は、一般的には手作業になりがちだ。自動化によって、工数を削減するとともに、人為的なミスが入り込む余地をなくすことが重要になる。こうした自動化は、MBDの大きなトレンドの1つだと同氏は指摘する。
トヨタは、マスワークスのMBDツール「MATLAB/Simulink」を量産ECU(電子制御ユニット)のソフト開発に利用している。21年10月のマスワークスの発表によれば、トヨタは最新のツールを活用することでMBDの各工程を自動化することに挑む。
マスワークスは、モデルのエラー検出やテスト生成などを自動化する「Simulink Design Verifier」や、テストの管理を自動化する「Simulink Test」、モデルからコードを自動生成する「Embedded Coder」など、各種自動化ツールを提供している。トヨタはMATLAB/Simulinkのバージョンを「R2015a」から「R2021a」に更新する際、Simulink Design Verifierなどの各種自動化ツールを活用し、一気通貫フローの構築を進めることを決めた。
同時にMATLAB/Simulinkの更新頻度を高めることで、最新のツール技術を最大限に利用できるようにする。これまではMBDツールの機能が不十分だったため、トヨタが独自にカスタマイズして使っていた。しかし、ツールの高機能化が進んだことで、トヨタはカスタマイズ機能を減らし、ツールの標準機能を最大限に活用する方針に変えた。