企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進などによりIT人材の需要は増え続けているはずなのに、なぜ平均年収が下がったのか――。
転職サービス「doda(デューダ)」を手掛けるパーソルキャリアが2021年12月22日に発表した「IT職種の平均年収ランキング2021」によると、2021年のIT職種の平均年収は438万円。昨年比14万円減で、全職種合計の6万円減より大きな下がり幅となった。

dodaの喜多恭子編集長は「調査結果ではIT職種の平均年収は下がったが、既存のIT人材の年収や需要が低下したわけではない」と解説する。平均年収低下の背景には、若年層の転職活発化がある。同社はdodaに登録している人材の現在の年収データを基に分析している。転職市場に年収の低い若年層が増えるほど、算出される平均年収の値が下がる。他の職種に比べて転職市場へ流入したIT職種の若年層の割合が高かったため、平均年収も大きく下がったというわけだ。
若年層の転職活動が活発化した理由は2つある。最大の理由はIT関連企業がデジタル人材の需要増に伴い、未経験社員を対象にしたポテンシャル採用を再開したことだ。IT業界は新型コロナウイルス禍による影響を受けにくいとされ若年層の人気が高まり、需要・供給ともに高まっている状態だという。
もう1つの理由は新卒採用でシステムエンジニア職に就いた2~3年目の若手社員が、適性の不一致やキャリアアップを理由に異業種や異職種への転職を望むようになったことだ。新型コロナ禍初期は採用を控えていた企業が2021年に採用活動を再開したこともあって、転職を望むIT職種の若手が増えているようだ。
営業職においても「新型コロナ禍でSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)のパッケージ導入が活発になり、各業界で営業を含む働き方のオンライン化が進んだ。オンラインでの新しい営業スタイルに挑戦したいという理由でのIT営業人材の登録も増えている」(喜多編集長)。
一方で、喜多編集長の言葉通りIT業界で働く30代、40代、50代以上の平均年収は増加傾向にある。最大の上がり幅を見せたのはハードウエア/ソフトウエア/パッケージベンダーに所属する50代以上の平均年収で、昨年比57万円増となった。喜多編集長は「コロナ禍では特に企業の情報システム部門が攻めの姿勢をとっている。デジタルを使った新しいサービス創出やITの経験を生かした仕事ができることから、経験豊富で年収が高い人材が転職市場に増えた」と分析する。
コロナ禍前から幅広い業界でデジタル活用が広がっているため需要が高く、即戦力となれる30代以上への提示年収は上がっている。そのためIT業界経験者がキャリアの見直しを行うケースが増加しているという。