音声SNS(交流サイト)「Clubhouse(クラブハウス)」が日本に紹介されたのが2021年1月。ビジネス系インフルエンサーによる拡散や、1アカウント2人までに制限された「招待制」などで大きな話題を呼び、ブームを生み出した。「日本上陸」から1年、国内での利用状況は落ち着きを見せている。Clubhouseはこの状況をどう捉えるか。Clubhouseのポール・デイビソンCEO(最高経営責任者)兼共同創業者は、2022年の展望として「日本が手本になる」と期待を寄せる。
ブームは「よくあること」と冷静
デイビソンCEOは2021年を「なんと表現してよいか分からないほど、素晴らしい1年だった」と振り返る。Clubhouseのサービス開始は2020年4月。当初は10人弱だった従業員は約1年8カ月を経て90人を超え、ユーザー数は世界で数千万まで伸びた。「Clubhouseは小さなベータ版のコミュニティーから、大きなコミュニティーへと進化を遂げたといえる」(デイビソンCEO)。世界各国へのローカライズにも手を伸ばし、2021年末には日本語を含む26の言語に対応した。
一方で、(行為の是非は別として)招待枠が売買されるほどだった日本市場でのClubhouseブームは一旦過ぎ去ったように見える。この状況に対して、デイビソンCEOは「まだ若いサービスとしてそういう時期にあると理解している。突然ダウンロード数が伸びたり、急に止まったりする。これはソーシャルアプリにはよくあることだ」と冷静だ。
デイビソンCEOはClubhouse以前にも10年以上ソーシャルアプリの開発に取り組んできた。共同創業者のローハン・セスCTO(最高技術責任者)はその時期からの知り合いだ。これまでの開発の中で「常にユーザーの声に耳を傾け、必要とされる新しい機能を追加していけば安定的にサービスを伸ばしていける」(デイビソンCEO)との実感を得ているという。実際にAndroid版アプリをリリースした2021年5~6月には、リリースから6週間で1000万を超えるダウンロード数を記録した。日本市場でも日本語対応版アプリのリリース以降、11~12月にはダウンロード数が急増した。
デイビソンCEOは「2021年最大のチャンスは世界的な規模の拡大だった。半面、コミュニティーは慎重に成長させるべきだと考えていたので、課題は大きかった」と明かす。グローバルでの急速な広がりに対して、Android版アプリや各言語へのローカライズといったシステム面の準備、グローバルでの規模感に対応できる組織が整備できていなかった。10人弱の従業員では当然対応しきれず、人材の採用を急ピッチで進めたという。