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 「種まき〔播種(はしゅ)〕から収穫、番重(ばんじゅう)*1に詰めるまでの作業を全て自動化した植物工場のシステムは、私たちが知る限り他には例がない」

 FAMS(新潟県見附市)代表取締役社長の森田卓寿氏は、同社が開発し、2021年10月に提供を開始した植物工場システム「アグリネ」についてこう説明する*2。従来型の植物工場システムに比べて大幅な省人化を実現。同社は、国内の食品メーカーやファミリーレストランなどはもちろん、海外も視野に入れて新市場の開拓に挑む。

*1 番重:主に食品を運搬するのに用いられる薄型の業務用容器。食材や料理を収納して何段にも重ねられる。
*2 「FAMS」は「Food & Agri Mechatro Solution」の頭文字。
FAMS本社にある「アグリネ」
FAMS本社にある「アグリネ」
(撮影:増井 友和)
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 FAMSは、安川電機が100%株主の子会社。設立は18年8月。安川電機が持つ産業用ロボットをはじめとするメカトロ技術を駆使した食品工場・植物工場の自動化システムのソリューションを主な事業とする*3。現時点では、「食品工場関連の事業で売上高は約10億円」(森田氏)。植物工場の自動化システムの実績は、大手食品メーカーから受注した1件のみだが、今後同システムに力を入れ、「25年度には植物工場のシステムの売上高を含めて、全社で20億円の売上高を目指す」(森田氏)。アグリネは、そんなFAMSの経営ビジョンの中核を成す商品だ。

*3 安川電機は2013年から植物工場の技術開発に着手していた。同社の植物工場自動化事業を独立させたのがFAMS。

従来型に比べて人件費を3分の1以下に

 アグリネは光源にLED照明を用いる完全人工光型植物工場のシステムだ。先述した通り種まきから搬送、収穫に至るまでの作業のほとんどをロボットなどによって自動化。従来型の植物工場システムに比べて大幅な省人化を実現した。「2万株規模の工場で比較すると、従来型の植物工場システムなら70名程度の作業者が必要なところを、20名程度で動かせる」(森田氏)。単純計算で人件費を3分の1以下に圧縮できるわけだ。

(出所:FAMS)
(出所:FAMS)
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 こうした自動化には収穫ロボットや垂直搬送ロボットなどのさまざまな技術が投入されている。中でも自動化に寄与したポイントは、苗を保持する「栽培コマ」と苗の間隔を調整するスペーサー、栽培コマを移動させるレールの採用だ。複数の苗を保持するパネルを用いていた従来の一般的な植物工場システムと異なり、種まき後に苗の間隔を調整したり、1つの苗を個別に収穫したりできる。こうした工夫によって従来の植物工場にはない自動化を果たした。

栽培コマ
栽培コマ
苗の保持に用いられる栽培コマ。培地のゲルが落下しにくいように穴の内側に突起を設けたり、根が穴から出て着水しやすいようなサイズにしたり、栽培しやすくするためにさまざまな工夫を凝らしている。(出所:日経クロステック)
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