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 オリンパスは国内初となる人工知能(AI)を備えた内視鏡画像の管理ソフトウエアを発売した。上部消化管の内視鏡検査について、画像が網羅的に撮影できているか、記録画像としての品質を満たしているかをAIで自動的に判別する。医師の自己学習を支援するほか、医療機関をまたいだデータ共有をしやすくし、現場の負担軽減につなげる。

 新たに発売した「Vivoly+(ヴィヴォリープラス)」はウェブブラウザー上で利用するクラウド型の内視鏡画像・リポート管理ソフトウエア。内視鏡で撮影した画像をLAN経由でアップロードするほか、USBメモリーを用いて手動で取り込むこともできる。撮影画像に記録する撮影部位などの医療情報は選択式で記入する仕様になっており、リポート作成の負担を減らせるようになっている。

 最大の特徴は撮影した画像を評価するAIを搭載していることだ。アップロードした画像の「撮影網羅性」と「記録画像としての適性」をAIが評価する。

解析結果画面のイメージ
解析結果画面のイメージ
(出所:オリンパス)
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 Vivoly+が現在対象としているのは上部消化管と呼ばれる食道から十二指腸までの範囲。消化管は1本の管状の構造をしており、どの部分が撮影できていないかがわかりにくい。また、粘液が付着していたりひだで隠れていたりして明瞭な画像が撮れていない場合がある。AIは消化管をいくつかの部位に区切って認識でき、それぞれの部位の推奨撮影枚数に対して、良好と判断された画像が何枚撮れているかをチェックする。

 内視鏡や磁気共鳴画像装置(MRI)、コンピューター断層撮影(CT)などの医療用画像を分析する医療AIは数多く登場しているが多くはがんなどの病変部位を検出する画像診断支援AIだ。Vivoly+の開発を担当したオリンパスメディカルシステムズICTソリューション開発の高橋佳子氏は「病変系のAIは病変かどうかを認識できればいいが、Vivoly+のAIは性質が異なる。1本の消化管は臓器ごとに明確に線引きできるわけではなく、網羅的に撮影できているかを判別させるのは難しかった」と語る。

 また記録画像としての適性についても、「何をもってよく撮れている画像と判断するかは医師によって判断が異なる」(高橋氏)ため、AIで不適切と判別する線引きをどこに置くかという課題もあったという。どこで区切って学習させるか、どんな画像なら不適切とするかなどのディスカッションを医師と続けることで開発に成功した。