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 「なかなか一歩が踏み出せない。伴走するパートナーとしてそんな企業の背中を押してあげたかった」――。ドリーム・アーツの石田健亮取締役CTO(最高技術責任者)は、同社が2021年11月末に発表した「ユーザー企業のITベンダーへの依存」実態調査について、調査を始めた狙いをこう話す。

 同社は従業員数1000人以上のユーザー企業に所属する「ITシステム決裁者(予算執行者、IT意思決定権者、IT選定に助言・意見を言える立場の方)」1000人を対象に、ベンダーとの向き合い方や関係性を調べた。調査の結果、回答者の過半数が「ベンダー頼り」に肯定的だとわかった。ベンダーと付き合う上で得した点として「ベンダーに任せられて仕事が楽」と考えている回答者は6割超に上った。

 ITベンダーへ過度に依存する「ズブズブ」な関係は、自社ビジネスの柔軟性や俊敏さを欠き、ひいてはDX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせとなる。調査では、その実態が明らかになるとともに、ベンダーを頼りつつも本音では「自律」したいというユーザー企業が抱えるジレンマが浮かび上がってきた。

全体の「6割がベンダー頼り」肯定派

 まず「あなたの企業は外部のSIer/ベンダーに頼っていると思うか」と尋ねた。頼っていると答えたのは「どちらかというとそう思う」を含めると61%に上った。「ベンダーに頼ることはプラスの側面があると思うか」という問いに対しては、「どちらかというとそう思う」も含めると57%が肯定的に捉えていた。

「あなたの企業は外部のSIer/ベンダーに頼っていると思うか」のグラフ(左)と、「ベンダーに頼ることはプラスの側面があると思うか」のグラフ(右)
「あなたの企業は外部のSIer/ベンダーに頼っていると思うか」のグラフ(左)と、「ベンダーに頼ることはプラスの側面があると思うか」のグラフ(右)
(出所:ドリーム・アーツ)
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 当然だが、ベンダーに頼ること自体は悪いことではない。問題はその頼り方だ。ドリーム・アーツは企業ごとの「ベンダーへの頼り方」の違いを分かりやすく示すため、「ITの利用傾向」および「ベンダーへの依存度」の特性から、対象企業から6つのグループを抽出した。

 ITの利用傾向による分類では、例えば、既存システムのメンテナンスコストが8割以上かつ、新規のデジタルトランスフォーメーション(DX)に費やすコストが0か1割、かつ自社システムのうちオンプレミスで運用する割合が9割以上と答えた回答者を「オールドタイプIT群」と定義した。

 他には、実業務をSIerが担っている割合が0か1割、かつ業務部門などが自らシステム開発などに取り組む「デジタルの民主化」という考え方に対して「非常に良い」と答えた回答者を「デジタルの民主化群」と定義した。

 ベンダーへの依存度による分類では、「ここ5年間で新しいSIerと直接取引がない(長年特定のベンダーと関係がある)」「ベンダーを変えるという発想をしたことがない、変えたいと思わない」「実業務の9割以上をSIerが担っている」などの条件のうち、満たしている項目の数に応じて「ズブズブ群」と「準ズブズブ群」を抽出した。

「ITの利用傾向」「ベンダーへの依存度」の特性による分類表
「ITの利用傾向」「ベンダーへの依存度」の特性による分類表
(ドリーム・アーツへの取材を基に日経クロステック作成)
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