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 福祉機器開発のマリスcreative design(東京・中央)は、視覚障害者向け歩行アシスト機器の開発でマクニカ、九州工業大学との産学連携を始めた。カメラを備えた眼鏡型端末として開発を進めてきたが、新たに人工知能(AI)を搭載して危険検知の精度を向上させる。2024年3月の実用化に向けて開発を加速する構えだ。

 マリスcreative designは2018年6月の創業以来、視覚障害者向け歩行アシスト機器「seeker(シーカー)」の開発を進めている。現在はまだ試作機の段階だが、眼鏡型端末と白杖(はくじょう)に装着する振動機器の大きく分けて2パーツで構成する構想だ。眼鏡型端末が障害物を検知すると振動機器が振動し、白杖が障害物に触れる前に利用者に危険を知らせる。

視覚障害者向け歩行アシスト機器「seeker」のイメージ
視覚障害者向け歩行アシスト機器「seeker」のイメージ
(出所:マリスcreative design)
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 危険検知は眼鏡型端末に備えたカメラの映像を解析することで実現する。映像から特定の対象物を認識し、進行方向なども考慮した上で衝突の危険があるかどうかを計算する。このたびの産学連携は、眼鏡型端末にAIを搭載することで、危険検知のさらなる精度向上を狙ったものだ。

 マリスcreative design代表取締役の和田康宏氏によると、これまではAIを使わないアルゴリズムで開発してきたが、現状では駅や駐車場など利用シーンをその都度指定しなければならない問題があるという。「AIで対象物を学習させてしまえば場面を問わず認識できる」(和田氏)ため、日常生活の中で使いやすくなる可能性がある。

 まずは対象物を絞り、信号などの優先度の高いものから学習させていく予定だ。また、看板や車のサイドミラーのように、足元には何もなくても上半身がぶつかってしまうという事故は多く、こうした白杖では検知できない障害物への対応も当事者からのニーズが高いという。

 産学での共創においては、九州工業大学が画像認識のアルゴリズム開発を、マクニカがAIの認識や部品の調達を、そしてマリスcreative designがそれらの技術やパーツを最終的なデバイスに落とし込む作業をそれぞれ担当する。2022年秋ごろにAIを搭載したデバイスを用いた実証実験を行い、2024年3月までの実用化を目指す。