「製造業と比べると、ロボット導入が20年遅れている」といわれてきた建設業界に特需が訪れる。深刻な人手不足を背景に、資材搬送、清掃、警備などの分野でロボット開発が次々と進み始めたからだ。この分野で国内市場をリードする企業の1社である竹中工務店は、建設現場で動作するさまざまなロボットを統一管理できる「建設ロボットプラットフォーム」を開発した。企業や業界の枠組みを超えた連携を進め、業界全体に浸透するロボット統一基盤の実現を狙う(図1)。
建設ロボットプラットフォームは、竹中工務店が20年に開発した、建設現場や建物内などのロボットを一括管理するシステムだ。自社開発する建設ロボットだけでなく、配送ロボットやドローンといった建物内のあらゆるロボットを管理することで、業務を効率化する。運用環境や用途が建設現場ごとに異なる建設ロボットを、個別に管理しきれないという課題に応えた(図2)。
実は数年前まで、国内の建設業界の現場でロボットが導入されることはほぼなかった。建設現場ごとに環境が大きく異なるため、毎回LiDAR(レーザーレーダー)などを使って、複雑な周辺環境の情報を学習させる必要があったためだ。高性能なセンシング機器を搭載するロボットを導入するには、建設ロボットの開発や投入にかかる多額のコストが障壁になっていた。
ところがその状況が、「19年ごろに一変した」(竹中工務店 経営企画室 新規事業推進グループ 副部長の浅井隆博氏)という。掃除ロボットを皮切りに、警備ロボットや搬送ロボットなどが建設現場で活躍するようになった。センサーなどの部品が安価になったことで、建設現場の複雑な環境であっても、実用的なロボットを開発できる採算性のめどが立ったからだ。
さらに日本においては24年に、建設ロボット市場の特需が起きると見込まれる。建設業界において同年に、これまで適用除外となっていた時間外労働に対する上限規制が適用されるからだ。人手不足にさらに拍車がかかるのは必至の状況だ。生産性を大幅に向上できるロボットの導入がこれからの数年でさらに増えていくと考えられる。
多種多様なロボットが求められる現場に統一基盤
今後、建設現場にロボット導入が増えていくことで、「個別にロボットを管理しきれない状況が訪れる」と同社 生産本部 生産企画部 副部長 機械電気担当の内藤陽氏は指摘する。建設現場には、清掃用のロボットや、工事の基準点を表示する墨出しロボットなど、製造業などと比べて多種多様なロボットが求められるからだ(図3)。こうした状況を打破するため、竹中工務店はロボットを統一管理するプラットフォームを開発した。