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 「一部報道などを見ているが、政府が学習履歴を含めた個人教育データを一元管理することは全く考えていない。資料にもデータは分散管理を基本とすると明記している」。牧島かれんデジタル相は2022年1月11日の記者会見でこう強調した。

 デジタル庁は2022年1月7日、総務省、文部科学省、経済産業省と連名で「教育データ利活用ロードマップ」を発表した。これが「個人の生涯学習データを一元管理」「政府 学習履歴など個人の教育データ デジタル化して一元化へ」などと報じられると、ツイッターなどで炎上し、「#教育データの一元化に反対します」というハッシュタグも登場した。

 教育データ利活用ロードマップとは、「誰もが、いつでもどこからでも、誰とでも、自分らしく学べる社会」というミッションを実現するために、データのスコープ(範囲)、品質、組み合わせの充実・拡大という「3つの軸」を設定。教育データの流通・蓄積の全体設計を提示したうえで、ルールや利活用環境、連携基盤などに関する論点や必要な措置を整理し、短期・中期・長期で目指す姿と具体的な施策を工程表とともに示したものだ。

教育データ利活用ロードマップ
教育データ利活用ロードマップ
(出所:デジタル庁)
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 2019年12月に発表された「GIGAスクール構想」で小中学校に関しては2021年7月末時点で1人1台の学習用端末の整備がおおむね完了し、高校に関しても整備が進んでいる。政府はこれを教育のデジタル化の第1段階であるデジタイゼーションと位置づける。ICTをフル活用して学習者主体の教育に転換し、教職員が子どもたちと向き合える環境をつくるのが第2段階のデジタライゼーションだ。その先にはデジタル社会を見据えた教育の検討といった第3段階のデジタルトランスフォーメーション(DX)があるとする。

個人情報などの連携には本人同意による提供が必要

 教育データ利活用ロードマップは第2段階のデジタライゼーションに焦点を当てている。さまざまなデータを蓄積し連携することで、例えば学習者は特性に合わせて自分らしい学び方を選べる、学校側は学級状態をより把握しやすくなり、受け持つ生徒に適した教材を見つけやすくなる、保護者は子どもの学校での心理状況が分かるなどといったメリットを得られるとする。