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 中小企業のデジタル化を支援する2022年以降の助成金の概要が出そろった。注目すべきは、政府がデジタル関連助成金で最大の予算を投入する「IT導入補助金」の対象を、幅広い企業で必要となる会計や受発注のデジタル化に置いた点だ。

2022年以降に導入される中小企業に向けた主なデジタル関連の助成制度
助成制度デジタルに関連する主な助成対象1社の最大助成枠
IT導入補助金会計・受発注などの業務システム380万円
成長型中小企業等研究開発支援事業デジタルを活用した研究開発通常枠は3年で9750万円、特定条件の枠で同3億円
ものづくり補助金(デジタル枠)自社で用いる独自開発システムや設備など750万~1250万円(従業員数による)
ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業複数企業で用いる業務システムなど参画企業合計で1.5億円

 企業の競争力強化では、研究開発の助成金を「3年間で最大3億円」と従来の3倍ほどに増やした。「中小企業の事業再構築を強力に支援する」と掲げた岸田政権の姿勢を反映した形だ。

 助成制度に応募できる企業は、中小企業基本法で「中小企業者」「小規模企業者」などに該当する企業である。ただ業種によって定義が異なるので注意が必要だ。例えば製造・建設・運輸業では資本金3億円以下かつ常勤従業員数300人以下、IT関連などを除くサービス業では資本金5000万円以下かつ従業員数100人以下、などである。

1社最大380万円、会計・受発注システム導入に活用

 多くの中小企業に役立ちそうなのが「IT導入補助金」だ。詳細は調整中だが、2022年春までに募集を始めて、少なくとも1年間は応募期間を設けるとみられる。2021年度補正予算で2001億円を計上した「中小企業生産性革命推進事業」から数百億円規模を充てる見通しで、数万社が同補助金を利用できる可能性がある。

 助成枠の上限は380万円だ。このうち350万円分で業務ソフトを助成し、残りの30万円でパソコンやタブレット、レジ端末を助成する。

2022年からのIT導入補助金の概要
助成対象助成率最大助成額
業務ソフトウエア(会計・受発注など)助成額50万円までは3/4350万円
助成額50万円超から350万円の部分に対して2/3
パソコンやタブレット1/210万円
キャッシュレジスター1/220万円

 政府が手厚く助成する狙いは、2023年10月に始まる消費税の「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」を滞りなくスタートさせることにある。助成により、各企業が消費税を納める際に必要となる「適格請求書(インボイス)」の電子化を後押ししたいわけだ。併せて、領収書類を電子保存するように求める改正電子帳簿保存法への対応も進展させる考えである。

 IT導入補助金の助成対象となる業務ソフトは、事務局がこれから公募・選定する。ただ、クラウド会計ソフトや受発注管理システム、決済関連ソフトなどが広く選ばれる見通しだ。

 電子インボイス推進協議会に参画するベンダーの会計・経理ソフトやERP(統合基幹業務システム)製品なども各社が応募すれば対象になるとみられる。制度開始までにIT導入補助金のWebサイトで選定したソフトを公開する。

 システム導入費を国が負担する助成率は、助成額が50万円までなら総額の4分の3、助成額が50万円を超える部分については同3分の2である。導入費516万6667円の場合に最大となる350万円の助成が受けられる計算だ。クラウドの利用ならば2年分の利用料を一括で助成するなど制度の使い勝手も高めている。

 注意が必要なのは、助成が受けられるのは新規のシステム導入に限られる点だ。つまりクラウドサービスも含めて既存システムの利用経費は助成対象にならない。審査基準にもよるが、前のシステムを廃止・解約して、業務のデジタル化を拡大するようなシステム刷新は新規導入として認められる可能性がある。インボイス制度や改正電帳法への対応を含めて、会計や受発注管理のシステムを抜本的に見直す好機が訪れたといえる。