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 島津製作所の子会社である島津産機システムズ(大津市)、エス.ラボ(京都市)、第一セラモ(滋賀県東近江市)、近畿大学が、金属3Dプリンター(アディティブ製造装置)の共同研究を開始した(図1)。「導入・利用コストが高い」「アフターサービスが十分ではない」「日本メーカーの需要に即した製品が少ない」といった課題に対応すべく、各メーカーと大学がそれぞれの専門性を持ち寄り、純国産での装置と材料の開発を進める。

図1 金属3Dプリンターの共同研究を始めた3社の代表者
図1 金属3Dプリンターの共同研究を始めた3社の代表者
手前左からエス.ラボ の柚山精一社長、第一セラモの川北晃司社長、島津産機システムズの中西典顕社長。3人の左後ろにあるのがエス.ラボ製の造形機、右後ろが島津産機システムズの焼結炉。(出所:日経クロステック)
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相互に装置と材料を

 対象となるのは「材料押出」(Material Extrusion:MEX)方式の金属3Dプリンター。金属粉末とバインダー(プラスチック)を混練したコンパウンドを積層造形した後、脱脂・焼結して立体モデルを完成させる(図2)。造形装置はエス.ラボが、焼結炉は島津産機システムズが、材料は第一セラモが中心となって開発する。

図2 MEX方式の金属3Dプリンターで造形したサンプル
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図2 MEX方式の金属3Dプリンターで造形したサンプル
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図2 MEX方式の金属3Dプリンターで造形したサンプル
MEX 方式では、造形したあとに脱脂・焼結して完成させる(左)。内部が 空洞になったような形状も造形可能だ(右)。(出所:日経クロステック)

 共同研究では各社の拠点に装置・材料を置いて効率的に研究を進め、材料ごとの最適な処理条件の見極めや装置・材料の改良に取り組むとともに、専門知識がなくても金属3Dプリンターを活用できるようにするためのノウハウを確立していく。また、近畿大学次世代基盤技術研究所特任教授の京極秀樹氏が研究全体の評価・指導に当たる。

 共同研究と同時に、装置や材料の販売も3社で連携して進めていく。まずは造形装置と焼結炉を組み合わせたシステム一式を約3000万円で提供するとしており、ユーザーからの要望も吸い上げていく計画だ。

低コストで速い新方式

 金属3Dプリンターは現在、大きく2つの方法が主流となっている。敷き詰めた金属粉末をレーザーなどで選択的に溶かして積層する「粉末床融解結合」(Powder Bed Fusion:PBF)方式と、レーザー肉盛り溶接のように、ノズルから噴射した金属粉末をレーザーなどで溶かす「指向性エネルギー堆積法」(Direct Energy Deposition:DED)方式だ。

 PBF方式やDED方式は金属材料を直接造形(溶融凝固)させる。一方、金属粉末を含んだプラスチックを材料として造形し、造形後に炉などで焼結するMEX方式の金属3Dプリンターも増えつつある。焼結工程が必要になるものの、金属よりも融点が低いプラスチックを造形するため造形時間が比較的短くて済み、レーザーなどの光源が不要で導入・維持のコストも安く済む。

 MEX方式の金属3Dプリンターによる造形は、粉末射出成形(PIM)や金属射出成型(MIM)と同様のプロセスといえる。PIMやMIMが金型に材料を射出して焼結前の立体モデルを成形するのに代わって、MEX方式では積層造形するわけだ。

 PBF方式やDED方式の金属3Dプリンターについては、日本でも工作機械メーカーや電子ビーム機器メーカーなどが国の支援を受けて装置や材料を開発し、製品化している。ただし、先行する海外製の装置・材料が多く流通しているのが現状だ。

 比較的新しいMEX方式の金属3Dプリンターも、既に複数の海外メーカーが製品化している。ただし、使用できる材料やシステム一式を同じメーカーから購入する必要があるといった制限があった。

 共同研究では国内メーカー3社が連携して、MEX方式の海外製金属3Dプリンターに対抗する。差別化のポイントとなるのが、使用できる材料の多様性だ。