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 世界各国で環境問題への関心が高まるなか、産業用に品種改良した大麻草*1である「ヘンプ」の利用が欧州の自動車メーカーを中心に拡大している。ヘンプは一般的な木と比較して単位面積当たりの二酸化炭素(CO2)吸収力が5倍程度あり、引っ張り強度が高いのが特徴。ドイツBMWなどはヘンプとポリプロピレン(PP)の複合材料をドアパネルに採用した。日本の自動車メーカーも採用を検討している。

*1 薬物のマリフアナのような陶酔作用はない。
繊維状のヘンプと不織布に加工したヘンプ
繊維状のヘンプと不織布に加工したヘンプ
(出所:日経クロステック)
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 産業用バイオ素材やベアリングなどを取り扱う総合商社の堀正工業(東京・品川)が「第12回 クルマの軽量化技術展」(2022年1月19~21日、東京ビッグサイト)にヘンプを出展した。同社は、欧州でヘンプ産業をけん引してきたオランダのHempFlax(ヘンプフラックス)のアジア圏における独占販売権を取得している。HempFlaxは1994年の設立で、オランダとルーマニアに2500haの農場を持ち、ヘンプなどの天然素材を年間1万t超生産している。

欧州では車の内装材として一般化

 展示会では「BMW i3」に採用された、ヘンプ50%、PP50%から成るドアパネル素材を展示した。ドイツのメルセデス・ベンツ、アウディもヘンプ素材を使った内装材を採用している。ヘンプの繊維で造った不織布のロールの相場は1m2当たり1000~2000円程度。ヘンプを使う部材は割高になるものの「欧州では自動車の内装材として一般化しつつある」(同社担当者)という。

BMW i3が採用したヘンプを使ったドアパネルの部品
BMW i3が採用したヘンプを使ったドアパネルの部品
ヘンプを50%、PPを50%含む。(出所:日経クロステック)
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 ヘンプはガラス繊維のようにプラスチックの強化材として使える。複合材の強度はガラス繊維を使った場合と同等だ。一方、環境面での差は大きい。ヘンプのカーボンフットプリント(CFP)*2はガラス繊維の2割程度。さらに、ガラス繊維よりも密度が低いため、「ガラス繊維複合材を、ヘンプを使った複合材に置き換えることで、成形品の重さを2割程度軽量化することも可能」(同社担当者)という。

*2 商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温暖化ガスの排出量をCO2に換算して、分かりやすく表示する仕組み。LCA(ライフサイクルアセスメント)手法を活用して、環境負荷を定量的に算定する。