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 東京都が新型コロナウイルス感染症対策の一環として、保健所のデジタル化を矢継ぎ早に進めている。2021年夏の第5波では感染者の急増により保健所の業務が逼迫し、自宅療養者に対する健康観察の電話連絡が難しくなるなどの課題があった。その反省に立ち、音声解析AI(人工知能)電話などのデジタル技術を活用することで、業務の効率化や感染者支援を強化している。

 2021年10月に東京都は福祉保健局に新チーム「保健所デジタル化推進担当」を設けた。多摩立川や多摩府中、島しょなど6カ所の東京都保健所に関して、デジタル技術の活用で業務効率化を進める役割を担う。デジタルを活用した保健所業務支援は新型コロナの感染拡大初期から取り組んできたが、業務内容のデジタル化まで踏み込むことでさらなる効率化を図る狙いだ。

東京都における保健所業務デジタル化の全体像
東京都における保健所業務デジタル化の全体像
(出所:東京都)
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 保健所業務のデジタル化施策の1つが、音声解析AI電話の導入だ。保健所は積極的疫学調査や自宅療養者の健康観察など電話を使う業務が多い。陽性者や濃厚接触者との通話内容をAIで音声解析し、自動的に文字起こししたり要約したりするデジタルツールを導入することで、通話内容の記録や他の職員との情報共有に役立て、業務を効率化する。

 音声解析AI電話にはAIを使った音声解析システムを手掛けるRevComm(レブコム)の「MiiTel(ミーテル)」を採用した。同様の製品は他にもあるが、導入までのスピードを重視し、東京都の本庁や各事業所をつなぐ独自ネットワークである「TAIMS(東京都高度情報化推進システム)」に対応できるMiiTelを選択した。

 2021年10月から検討を開始し、2021年11月に2カ所の保健所で導入したところ、現場から業務効率化につながるという評価を得た。そこで2021年12月、第6波に備えて東京都の6つの保健所全てで導入した。

「紙とホワイトボード」からの脱却目指す

 保健所デジタル化推進担当は、第5波が収束した2021年10月から6カ所の保健所とともに業務フローと課題を洗い出した。そのうえで「デジタルでできることはデジタルで」という考えの下、対応策を検討した。

 都民へのサービス品質(QOS)向上に資することと個人情報保護の徹底を条件に、課題を解決する具体的なデジタルツールの選定は2021年4月に発足したデジタルサービス局の支援を受けた。矢継ぎ早にデジタル対策を打ち出せたのは「各保健所の課題認識が強かったことが大きい」(都担当者)という。