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 衛生用品大手のユニ・チャームにおいて、知的財産本部が特許によるデジタル技術の保護でDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献している。知的財産本部特許部内に知的財産とデジタルの知識を併せ持つ人材で構成したDXの専門組織「DXグループ」を立ち上げた。

 2021年には30件以上のデジタル関連特許を公開にこぎ着けた。例えば、BABY JOBと共同で展開するおむつのサブスクリプションサービス「手ぶら登園」、非接触でマスクの装着が体験できるAR(拡張現実)などだ。さらに2020年の意匠法改正で新たに「画像」が保護対象となったことを受け、生理管理アプリ「ソフィ 生理日管理&生理不調ケア」では画面UI(ユーザーインターフェース)を意匠登録した。

「ソフィ 生理日管理&生理不調ケア」アプリの画面例
「ソフィ 生理日管理&生理不調ケア」アプリの画面例
(出所:ユニ・チャーム)
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知財に関するeラーニングを全社員に実施

 DXの専門組織をつくったのは2019年。それ以前もデジタル技術の特許対応は行っていたものの、紙おむつなど製品の特許対応との兼任に限界を感じていたという。どうしても製品の特許対応を優先してしまい、デジタル特許対応に注力しきれないような面があった。知的財産本部の下江成明特許部長は「デジタル活用は特定の製品に限ったことではなく、担当も定まっていなかった。今後、生まれるデジタル関連の知財の保護を考えると、知識を持った専任担当が必要だと判断した」とDXグループ発足の背景を明かす。

 DXグループではITベンダーとの契約から特許の登録まで、一気通貫で現場をサポートする。知的財産本部特許部の伊藤淳一DXグループマネージャーは「ユニ・チャームではアジャイル形式で開発を進める。知財に関しても(専門チームによる)スピード感を持ったワンストップでの対応が肝要だ」と話す。DXグループを構成するのは、IT企業で知財業務の経験を持つ数人の社員だ。「デジタルの特許対応は従来のものづくりの知財とは異なる新しいことに取り組む仕事。今までとは違う考え方を持った人材を入れたい」(下江特許部長)と考え、外部からメンバーを採用した。

 ユニ・チャームはデジタル技術の活用で顧客の潜在ニーズを引き出し、商品開発やサービス展開につなげることを目指している。デジタル技術の活用は開発担当者にとってもチャレンジだ。そのため、知的財産本部特許部DXグループの星野恵一氏が「過去のノウハウと異なる点が多いため、現場の目指すものをヒアリングして権利保護の仕方や契約条件を一緒に検討する」と話すように、DXグループは現場とのコミュニケーションや情報発信に注力しているという。

 2020年には全社員に向けて、アプリケーションなどを開発する際のよくあるトラブルをまとめたeラーニングを実施した。知財の難しいイメージを払拭し、わかりやすく伝えるために漫画の形で全6回を発信した。シナリオやセリフなどは法律事務所の監修を受けながら伊藤マネージャーが自ら作った。グローバルでの展開を見据え、日本語版もセリフなどを横書きで構成。英語・中国語・ベトナム語に翻訳して現地法人にも展開している。

1回目のeラーニングで活用した漫画の抜粋
1回目のeラーニングで活用した漫画の抜粋
(出所:ユニ・チャーム、内田・鮫島法律事務所監修)
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 eラーニングの実施当初は一部の社員から「現状では必要性が感じられない」などと否定的な声も上がったものの、デジタル活用の経験を積んだ社員たちの意識は徐々に変わっていった。デジタル活用が進むにつれて、開発担当者は教材の漫画に載っているようなトラブルを身をもって経験したのだ。「eラーニングは社内で『予言書』とまで呼ばれるようになった」(伊藤マネージャー)。最近ではリスクを低減するため、プロジェクトの早い段階でDXグループに相談してくる現場担当者が多くなったという。