香川県高松市の繁華街の外れに小さなオフィスを構えるRaise the Flag.(レイズ・ザ・フラッグ、高松市)。骨董屋の脇の通路を進んだ先にある隠れ家のようなこの場所で生まれたデバイスが話題を呼んでいる。「視覚に代わる新感覚デバイス」とうたうその装置は、視覚障害者の世界を変える可能性を秘めている――。
経済産業省が2022年1月14日に開催した「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2022」。ビジネスコンテスト部門で最優秀賞を受賞したのが、「SYN+(シンプラス)」を開発するRaise the Flag.だ。同社の中村猛CEO(最高経営責任者)は受賞コメントで「『昔は目が不自由だったら困ったんだよね』と言えるような社会を作りたい」と将来のビジョンを語った。
その実現のために2017年5月の創業以来開発を進めているのがSYN+だ。視線の先にある物体との距離を振動パターンに変換して使用者に伝えるという独特なアプローチで、視覚障害者のQOL(生活の質)向上を目指している。現在は原理試作の段階で、2022年末にベータ版をリリースし、早ければ2023年末に実用化する予定だという。
SYN+は眼鏡型デバイスと腰に掛ける想定の本体という、大きく分けて2つの部位で構成される。眼鏡型デバイスは周辺環境の撮影や使用者へのフィードバックを担う部位で、ステレオカメラ、アイ・トラッキング・システム、そして骨伝導がベースの技術となっている。本体にはコンピューターとバッテリーが積まれており、計算処理や通信などを担う。