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 自動運転に価格破壊の波が押し寄せている。米Intel(インテル)子会社のイスラエルMobileye(モービルアイ)は、新型の車載SoC(System on Chip)「EyeQ Ultra」でレベル4の自動運転システムを1チップ化し、大幅なコスト削減を目指す。

 同社は2025年ごろに予想されるレベル4の自動運転車として、「ロボットタクシー(自動運転タクシー)」と「消費者向けの自動運転車」の2つを挙げる。ロボットタクシーはすでに米Alphabet(アルファベット)傘下の自動運転開発会社Waymo(ウェイモ)が米国アリゾナ州で配車サービスを展開しているほか、中国Baidu(バイドゥ、百度)が北京市内で試験サービスを始めている。「25年には、より多くの国や地域でロボットタクシーによる配車サービスが立ち上がる」(モービルアイ)とみる。

 一方、消費者向けの自動運転車は、通常の乗用車にレベル4の自動運転システムをオプション装備として追加したものだ。法規対応などの課題は残るものの、「25年ごろには一部の国や地域で発売される見通し」(同社)とする。例えば、中国Geely Holding Group(吉利グループ)の高級電気自動車(EV)ブランド「Zeekr」は、消費者向けのレベル4車両をモービルアイと共同開発し、24年に中国市場で販売する計画だ。

Zeekrが消費者向けレベル4車両を2024年に販売
Zeekrが消費者向けレベル4車両を2024年に販売
モービルアイの車載SoC「EyeQ 5」を6個使って実現する(出所:インテル/モービルアイ)
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 消費者向けのレベル4車両は、低価格化が普及の鍵を握る。モービルアイによると、乗用車のオプション装備として販売するレベル4のシステムは、価格を1万ドル(同約115万円)以下に抑える必要がある。例えば、米Tesla(テスラ)がオプション販売するレベル2+の自動運転システム「FSD(Full Self-Driving)」は約1万2000ドル(同約138万円)であり、価格帯としては近い。ただ、モービルアイが目指すのは運転者を必要としないレベル4である。運行設計領域(ODD)も一般道に広げることを目指す。

 レベル4のシステムでは、信頼性を高めるために冗長性の確保が欠かせない。同社は「REM(Road Experience Management)」と呼ぶ技術で自動生成した高精度地図と、車載カメラを組み合わせたシステム「SuperVision」でレベル2+を実現済みである。レベル4では、そこにカメラとは独立したミリ波レーダー及びLiDAR(レーザーレーダー)のシステムを加えることで、センサー系を多重化する。センサーからの信号を処理する車載SoCも、内部回路を2系統に分けて冗長性を確保し、機能安全規格「ISO 26262」の「ASIL-D」に対応させる。

高精度地図とカメラを使ったレベル2+システム
高精度地図とカメラを使ったレベル2+システム
東京の一般道でハンズオフの実証実験をした。EyeQ 5を2つ使っている。レベル4では、ミリ波レーダーとLiDARを追加し、EyeQ 5を6つに増やす必要がある(出所:インテル/モービルアイ)
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 センサーとECU(電子制御ユニット)を合わせたレベル4のシステム全体のコストは5000ドル(57万5000円)以下を狙う。その主な内訳は、車両の周囲360度を監視するカメラとミリ波レーダー、前方を監視する1台のLiDARが計4000ドル以下、車載SoCを含むECUが1000ドル以下、である。

 冒頭のEyeQ Ultraは、1000ドル以下のECUを実現する上で欠かせないものだ。24年の発売を目指すZeekrのレベル4車両は、モービルアイの車載SoC「EyeQ 5」を6個使う。また、モービルアイが22年内にイスラエルとドイツ・ミュンヘンでサービス展開するレベル4のロボットタクシーはEyeQ 5を8個使う。これに対し、EyeQ UltraはEyeQ 5の約10個分の性能を1チップで実現する。

 1チップ化することでコストを削減するとともに、消費電力も抑える。EyeQ Ultraを搭載したECUは消費電力を100W以下にできる見通しである。EyeQ Ultraは5nm世代の半導体プロセス技術で製造し、23年後半にファーストシリコン(チップ試作)、25年に車載グレード品を生産する。製造はこれまでのEyeQチップと同様、伊仏合弁STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)に委託する。

1チップでレベル4を実現する「EyeQ Ultra」
1チップでレベル4を実現する「EyeQ Ultra」
12個のRISC-Vコアや、64個のアクセラレーターを搭載する(出所:インテル/モービルアイ)
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