「5G(第5世代移動通信システム)のフル機能が利用できるようになる」。KDDIが新たに立ち上げた5Gインフラについて、野口一宙ソリューション事業本部サービス企画開発本部5G・IoTサービス企画部長はこう話す。
KDDIは2022年2月21日、現行の5Gとはインフラ構成を大きく変えた「5G SA(スタンドアローン)」方式の通信サービスを法人顧客向けに開始した。現行の5Gで実現済みである高速・大容量のデータ通信に加え、低遅延で安定した通信も可能になる。また同日、動画配信サービス「ABEMA」において5G SA方式のネットワークを介した高品質映像の生中継を実施した。同社は2022年夏以降、一般消費者向けにも5G SAを導入する計画だ。
携帯電話事業者各社が2020年春に相次いで開始した5Gの商用サービスは、実は4G(第4世代移動通信システム)とセットでなければ稼働できない「5G NSA(ノンスタンドアローン)」方式の通信インフラを使っている。
一般に携帯電話ネットワークは、通信回線を制御するコア設備と、基地局などの無線設備で構成する。5G NSAの場合は4G向けのコア設備を流用しており、基地局を周囲の4G基地局と連動して動作させる必要がある。携帯電話事業者各社が5G NSAを優先したのは、コア設備の更改を待たず早期に高速・大容量のデータ通信を実現するための戦略だった。結果としてこれまでは5G本来の実力を十分に発揮できてはいなかった。
一方の5G SAは、コア設備も無線設備も全て5G向けのものだけで動かす。高速で大容量のデータ通信に加え、5G SAではデータの遅延時間が大幅に短くなる。ネットワーク混雑時もより安定的に通信できるなど、5Gのメリットをフルに生かせると言われている。