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 インターネットを流れる情報の信頼性を高める――。政府はこうした狙いで進める新たなWebアーキテクチャー「Trusted Web」のプロトタイプを開発した。これを公開して転職応募のやり取りをユースケースとして検証し、民間企業での利用シーンを示して、実装に向け技術コミュニティーなどと対話を進めていく。

 偽情報や誤った情報を拡散させないよう、Trusted Webは情報の信頼性を担保できる仕組みを持つ。折しもロシアによるウクライナ侵攻で、SNS(交流サイト)やWebメディア上での偽情報の流布が大きな問題になっており、Trusted Webの重要性が高まっている格好だ。現状ではコンテンツやアプリケーションなどのサービスを提供するOTT(Over the Top)事業者がそれぞれのプラットフォームで偽情報を削除したり、信頼できるメディアであることを標榜したりするといった対応によってWeb上での信頼性を確保しようとしている。

Webブラウザーの拡張機能として新たに実装

 「インターネット上で流通する情報の新しい秩序や信頼形成のための、新しいメカニズムをつくらないといけない時代になってきた」と慶応義塾大学の村井純教授は力を込める。村井教授はTrusted Web構想を進める政府の内閣官房デジタル市場競争本部「Trusted Web推進協議会」の座長を務める。

 Trusted Web構想ではOTT事業者のサービスアプリケーション層ではなく、さらに下の階層のデジタル基盤に、やり取りなどをする際のデータや相手を検証しやすくしたり、相手に開示するデータをコントロールできるようにしたりする仕組みを埋め込む。

 同協議会が中心となりこのたび開発したプロトタイプでは、特定のサービスに依存しないでユーザー個人がIDを発行し活用する仕組みとして「分散型ID(Decentralized Identifier、DID)」と「検証可能な証明書(Verifiable Credentials、VC)」といった、Trusted Webで想定する機能を、Webブラウザーのエクステンション(拡張機能)として新たに実装した。

 同協議会は2021年3月にTrusted Webの機能などをまとめた「Trusted Web ホワイトペーパーVer1.0」を公開している。このホワイトペーパーで示したTrusted Webの機能は4つ。「Identifier 管理機能(識別子の管理)」「Trustable Communication 機能(信頼できる属性の管理・検証)」「Dynamic Consent 機能(動的な合意形成)」「Trace 機能(条件履行検証)」を「Trustモデル」として備える。

「Trusted Web ホワイトペーパーVer1.0」で示した、Trusted WebのTrustモデル。4つの機能を実装する
「Trusted Web ホワイトペーパーVer1.0」で示した、Trusted WebのTrustモデル。4つの機能を実装する
出所:内閣官房デジタル市場競争本部
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