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 「話にならない。トヨタ自動車と切り離せと言いたいぐらいだ」──。日野自動車で発覚した排出ガスおよび燃費不正。トヨタ自動車の関係者(以下、関係者)からは辛辣な言葉が飛ぶ。別の関係者は「信じられない。まさか、トヨタ自動車の子会社からお客様をごまかそうという考えが出てくるなんて」とため息をつく。あるトヨタ自動車出身者は、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン)の排出ガス不正や、三菱自動車とスズキによる燃費不正を引き合いに出し、「悪質さは変わらない。むしろ、それらから何も学んでいないことに日野自動車の病状の深刻さが表れている」と一刀両断だ。

排出ガス不正および燃費不正が発覚したエンジン
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排出ガス不正および燃費不正が発覚したエンジン
左は排気量が5Lの中型エンジン「A05C」。中型トラック「日野レンジャー」に搭載した。経年変化によって排出ガスの規制値を超過する可能性がある。右は排気量が9Lの大型エンジン「A09C」。大型トラック「日野プロフィア」に載せた。燃費性能が諸元値を満たしていない。(写真:日野自動車)

 日野自動車の不正について、トヨタ自動車はこうコメントする。「トヨタグループにとって法令順守(コンプライアンス)は経営の根幹。今回、日野自動車が信頼を損なう行為をしたことは遺憾だ。ただ、日野自動車は子会社ではあるが上場企業で独立して運営しているため、まずは同社が責任をもって速やかに原因を解明して再発防止に向けて万全に取り組むべきだ。トヨタ自動車は親会社としてその取り組みをできる限り支援する」。

 親会社としての責任を感じつつも、日野自動車の経営の独立性を尊重して冷静さを保っているようにも感じるが、このコメントを額面通りに受け取る関係者は少ないようだ。「我が子に裏切られたようなもの。トヨタ自動車の上層部は怒り心頭に発しているだろう。日野自動車にトヨタ自動車から人を送り込み、そこまでやるかというほど厳しい措置を講じるはずだ」(関係者)という見方が大勢だ。

車検不正に続くコンプラ違反

 トヨタ自動車が「できる限り支援する」というのは、同社にとって日野自動車が重要な子会社だからだ。2001年にトヨタ自動車は、日野自動車の第三者割当増資を引き受け、発行済み株式の過半数を取得した。これにより、日野自動車は出資関係が50.14%のトヨタ自動車の子会社となった。経営リソース的に、トヨタ自動車は軽自動車と中型以上のトラックやバスを造らない。そのため、日野自動車は実質的にトヨタ自動車の商用車部門の位置づけにある。

日野自動車社長の小木曽聡氏(左)と同社会長の下義生氏(右)
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日野自動車社長の小木曽聡氏(左)と同社会長の下義生氏(右)
2022年3月4日に緊急会見を開催し、不正について謝罪した。(写真:日経クロステック)

 それだけではない。トヨタ自動車には、日野自動車が子会社であるという理由以上に危機感を抱いていると思われるものがある。それは、顧客に対するイメージの悪化だ。というのも、2021年3月以降、系列を含むトヨタ自動車の販売店で不正車検が発覚しているからだ。この不正車検問題がまだ完全には収束していないにもかかわらず、今度は子会社において再びコンプライアンス違反が発生したのである。不祥事が連続したことで、「トヨタ自動車は本当に大丈夫なのかと疑う顧客が増えかねない。販売面に負の影響を及ぼさないように、トヨタ自動車は不正に対してこれまで以上に厳しい姿勢を見せる必要がある」(関係者)というのは無理のないところだろう。

 発覚したらトヨタ自動車を怒らせることは当然、日野自動車は分かっていたはずだ。それなのに、なぜ日野自動車は不正に手を染めたのか。これまで不正を犯した他の日本企業と同様に、日野自動車にも不正を誘発する原因があったと考えられる。