自動車メーカーが、電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池の内製化にかじを切る。先頭を走る米Tesla(テスラ)をトヨタ自動車が追いかけ、電池メーカーに傾く力関係を引き戻す。今後縮小するエンジンの雇用を守る布石とも位置付ける。混沌とするEV向け電池開発の行方を見通す。
「今後は電池がエンジンの代わりになる。エンジンの雇用をどう電池で吸収するのかなど、いろいろ考えた結果だろう」〔トヨタ自動車とパナソニックの電池合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(PPES)社長の好田博昭氏〕――。
トヨタ自動車は2021年12月、グループの豊田通商と米国に電池工場を設立すると発表した。この事実上の完全内製化の方針は「パナソニックとの関係悪化か」など多くの臆測を呼んだ。PPESが手掛けるのが当然に思えるし、実際、パナソニック関係者からは憤りの声が漏れる。
一見軽んじられた格好のPPESだが、同社社長の好田氏は日経クロステックの取材に対してトヨタがEV電池の内製化に本腰を入れる方針の真意を読み解き、理解を示す。
好田氏がトヨタ出身であることも大きいが、自動車メーカーにとってEVの比率が増えるにつれて縮小するエンジン工場の雇用をどう守るのかは、極めて切実な問題と心中を察する。トヨタは米国電池工場を「手の内化」することで「雇用吸収力」がどれほどか把握したいとみるわけだ。
好田氏によれば、実態はトヨタがPPESの存在を軽んじた決断ではないという。「PPESが電池設計や製造準備を従来通り手掛け、トヨタが工場運営を実施する」(同氏)と、PPESの強みを生かした役割分担があると説明する(図1)。