Webデザイン界で急成長を遂げているツールがある。米Figma(フィグマ)の「Figma」だ。米UX Tools(UXツールズ)が例年実施しているデザインツールに関する調査の2021年版では、9部門のうち5部門で1位を獲得。2021年6月にシリーズEの資金調達を実施し、評価額は100億ドルを超えている。
そのフィグマがアジア最初の市場として日本に進出した。2022年3月16日に日本法人Figma Japanの設立を発表。カントリーマネージャーには川延浩彰氏が就任した。
同社の基本的なビジネスモデルはフリーミアムだ。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)形式で提供する無償版で実際に使ってもらって、その有効性を認識した利用者を有償版に誘導するというモデルである。Web会議サービスの「Zoom」がこの手法で大成功を収めた。
フリーミアムでは実際に使われたときの評価が重要になる。具体的には、機能性とレスポンスに関する評価だ。この点について川延氏は「デザイナーの期待に対して不自由ない機能と性能を提供できている」とする。
デザイン工程の「サイロ化」を解消
そのうえでFigmaならではの特性が急成長につながっているという。川延氏はFigmaの最大の特徴を「Webブラウザーベースで利用できるよう当初から設計されていて、複数のデザイナーによる共同作業を可能にしている。さらにデザイン工程の上流から下流まで、エンド・ツー・エンドで提供する」と説明する。これらの特徴によりデザインのワークフローが大きく変わったという。
「これまでのデザイン工程は『サイロ化』されていた。多くのツールはデスクトップアプリが中心で、個々の工程ごとに別のツールを使っていた。このためデザインのプロセスは分断されていた」(川延氏)。例えばデザイン工程の1つであるワイヤーフレーム(画面レイアウト)を作成している間は、他のデザイナーがそれに触れられなかった。
Figmaを使えば誰かの作業の完了を待たずに他のデザイナーが関われるようになる。システム開発でいえば、ウオーターフォール型からアジャイル型に転換できるということだ。
従来のワークフローをWebベースで一変させたという点で、技術者になじみのあるツールで例えればソースコード共有サービスの「GitHub」に近い存在といえよう。GitHubは既に業界標準としての地位を確立した。Figmaはその点でも「Webデザイン界のGitHub」となりつつある。