日産自動車が2割出資する電池メーカーの中国Envision AESC Group(エンビジョンAESCグループ)が、電気自動車(EV)向けで攻勢をかける。2024年に質量エネルギー密度が300Wh/kgに達するリチウムイオン電池、27年には全固体電池を量産する。同社CEO(最高経営責任者)の松本昌一氏に今後の方針を聞いた。
30年にはEV向け電池の需要が21年の10倍近い2000G~3000GWhに達し、急成長するとの見方があります。
30年の当社目標値は公表していませんが、最低でも1割のシェアを獲得したいと考えています。現状の生産能力は10GWh前後。生産した電池の9割以上が日産「リーフ」に向けたものとなります。25年前後には採用車種が増え、生産能力を100GWh程度に拡大する計画です。
日本では神奈川県座間市の工場で生産しており生産能力は2.6GWh、24年の稼働を目指す茨城県の新工場では当初6GWh、早期に10GWhを超える水準にするつもりです。
中国の江蘇省無錫市には生産能力が3GWhの工場があり、20GWhまで拡張する余地があります。中国では内モンゴル自治区オルドス市にも工場を建設しており、22年4月には一部のラインで生産を開始します。ここも生産能力を最大20G~30GWhまで拡張できます。英国をはじめフランスや北米の工場も拡張を検討しており、これらを合わせると100GWhの水準になります。
受注状況ですが、中国以外の市場は24~25年ごろまでほぼ固まっています。中国は他地域と比べて1年くらい開発期間が短いため、状況が異なります。
3元系〔正極活物質の主成分がニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)〕リチウムイオン電池が中心です。どう進化させますか。
これから建設する茨城県の新工場では、第5世代品に加えて、Niの比率を高めた第6世代品のNMC811(Ni、Mn、Coの比率が8:1:1)の生産を予定しています。第6世代では体積エネルギー密度で600~700Wh/L、質量エネルギー密度で300Wh/kg程度を目指します。
現在リーフ向けに生産しているものは第4世代品で、NMC532(同比率が5:3:2)となります。第5世代品にもNMC811を用意していますが、第6世代品はNiの比率を8.5前後までとさらに高めたものとなります。
ちなみに第5世代品と第6世代品ではNMC622(同比率が6:2:2)も用意します。中国市場を中心に、比較的安い低Ni比率品にも引き合いがあります。
Ni比率を高めると燃えやすくなります。韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)のNMC811では、安全性の問題が頻発しました。
これまで60万台超のEVに当社の電池を搭載してきましたが、致命的な事故が一切ないことが1番の強みです。今後も品質と安全でトップを維持します。
安価な電池として再び注目が集まるLFP(LiFePO4、リン酸鉄)系リチウムイオン電池は手掛けますか。
LFP電池は、主に中国のオルドス工場で生産します。定置用とトラック用です。