NTTドコモは2022年6月からオンライン料金プラン「ahamo」において、データ通信量を増やす新しいオプションの「ahamo大盛り」を提供する。これを発表したのが2022年3月23日。春商戦の終盤、年度末が迫ったタイミングでの唐突な発表に同社の「打算」と「誤算」が透ける。
povo対抗か、「お徳用」のギガ追加
ahamo大盛りは、ahamoの月額基本料2970円(税込み、以下同)に1980円の追加料金を支払うことで、その月の高速データ使用量を標準の20ギガバイトから100ギガバイトへ増やせるというオプションサービスだ。
ahamoを含む通信各社の料金プランの多くは、俗に「ギガ」と呼ばれる高速データ使用量を1ギガバイト単位で追加する。ahamo大盛りでは一気に80ギガバイト分を追加する代わりに単価を安くした、「お徳用」のギガ追加オプションである。
「中容量、オンライン手続き、シンプルというahamoのコンセプトを継続したまま、顧客のデータ通信需要の高まりを受けてオプションを用意した。100ギガバイトあればほぼ使い放題に近い形で使っていただけるほか、切りのよい数字ということもあり100ギガバイトにした」。報道関係者向けの説明会に登壇した岡慎太郎ahamo推進室長は、ahamo大盛りの狙いをこう説明した。
大容量の追加オプションを打ち出したのは、KDDI(au)のオンライン専用ブランド「povo2.0」対抗の意味合いが強そうだ。povo2.0は月額基本料が無料。代わりに、高速データ通信をするには1ギガバイトから150ギガバイトまで5種類の「トッピング」をユーザーが選んで購入する。
ahamo大盛りの場合、月額基本料とオプション料金の合計で100ギガバイト4950円だ。povo2.0のトッピングと異なり、余ったデータ量の翌月繰り越しができないなどの制約はあるものの、1ギガバイト当たりの単価で比べればpovo2.0の大容量トッピングより割安である。
3月発表、開始は6月
ahamo大盛りのサービス内容は単純明快だが、不可解なのは3月23日という春商戦も終盤戦の中途半端なタイミングで発表したことだ。新年度を控えた春商戦はスマートフォンが年間で最も売れる時期。通信各社は前哨戦として前年末に若者向けの料金プランやキャンペーンなどを発表し、商戦ピークの2~3月に系列販売店や家電量販店などで顧客獲得を強化するという流れだ。
この点、ドコモの岡室長は、ahamo大盛りは「春商戦の目玉ではない」と認める。ahamo提供開始1周年に当たる3月26日に合わせたサプライズかと思いきや、実際にahamo大盛りを提供するのは6月から。発表時点で展開するのは、6月以降にahamo大盛りを利用すればdポイントをプレゼントするという「先行エントリーキャンペーン」のみである。少なくとも、周到な準備の下で発表タイミングを選んだとは考えにくい。
ではなぜこのタイミングで発表したのか。深読みすると「打算」と「誤算」が見えてくる。