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 冷凍技術とデジタル技術を融合し、食ビジネスの付加価値向上と食品ロス削減の両立を――。こんな目標を掲げたベンチャー企業が、事業拡大にアクセルを踏む。単に凍らせるのではなく、食品の品質を高く保てる「特殊冷凍」と呼ぶ技術を強みに、IoT(インターネット・オブ・シングズ)技術による冷凍レシピの更新や遠隔保守といった機能を持つ新型冷凍庫を2022年10月にも実用化する。ネットとソフトウエア技術を付加価値の源泉にする電気自動車メーカー米Tesla(テスラ)を手本と仰ぐ、フローズンテック企業の挑戦とは。

 開発するのは2013年に設立した冷凍技術ベンチャーのデイブレイク。同社が強みとする特殊冷凍技術とは、「食品の細胞の破壊を極少化する冷凍技術」(デイブレイクの木下昌之社長)だ。急速かつ均一に冷却する冷凍技術を土台に、冷風の湿度や冷風の当て方などを食材ごとに調整。細胞の損傷を最小限にしてうまみ成分の流出を抑えるほか、食材の形状を維持したり調理済みの温かい食品を急速冷凍したりできるという。

デイブレイクの技術で冷凍した食材の例
デイブレイクの技術で冷凍した食材の例
(出所:デイブレイク)
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 デイブレイクは特殊冷凍が可能な冷凍機の販売や導入支援、同技術で冷凍した食材の販売といった事業を手掛ける。飲食店や食品メーカー、生産者が主な顧客だ。

 ただ、同社によれば特殊冷凍機を利用している企業の9割以上はうまく使いこなせていないという。冷凍時間の設定や、温かい食材をいかに品質を保って冷凍するかなど、様々なノウハウが不十分なためだ。

 「特殊冷凍技術を誰もが簡単に使いこなせるようにできないか」。こう考えた木下社長が開発に着手したのが、IoT機能を備えた特殊冷凍機だ。2021年10月に発売した自社開発の特殊冷凍機「アートロックフリーザー」に、温度や重量のセンサー、インターネット経由での通信やデータ処理といった機能を追加する。