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 ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、世界共通のコミュニケーション基盤とされてきたインターネットの存在意義を揺るがす事態が相次いでいる。国内の情報統制を進めるロシアは2022年3月4日、米Meta Platforms(旧Facebook)のSNS(交流サイト)「Facebook」への接続を停止すると発表。その他のSNSについてもアクセス制限を強めているもようだ。

 それだけではない。インターネット接続事業者(ISP)同士で通信トラフィックそのものを止める動きもある。インターネットイニシアティブ(IIJ)の研究機関であるIIJ技術研究所の観測によれば、米通信大手Cogent Communicationsとロシアの通信大手TransTeleComとの間で2022年3月4日ごろ、インターネット接続が遮断されたとみられる。同時間帯に、Cogentとロシアの携帯電話事業者との通信も遮断されたことが分かっている。

IIJ技術研究所「Internet Health Report」の観測によると、2022年3月4日に米Cogent CommunicationsとロシアTransTeleComのネットワーク依存性がゼロになった。これは両社のネット接続が論理的に切断されたことを意味するという
IIJ技術研究所「Internet Health Report」の観測によると、2022年3月4日に米Cogent CommunicationsとロシアTransTeleComのネットワーク依存性がゼロになった。これは両社のネット接続が論理的に切断されたことを意味するという
(画像出所:IIJ技術研究所)
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 こうした動きがロシア・ウクライナ問題の長期化によって広がれば、より大規模なインターネットの「分断」も現実味を帯びてくる。膨大な数のネットワークが国・地域の壁を越えてつながり合う自律分散型のインターネットにおいて、分断はどのように起こる可能性があるのだろうか。

2008年には「BGPハイジャック」も

 世界規模で広帯域のバックボーン(基幹回線)を保有する「Tier1(最上位)」プロバイダーのNTTコミュニケーションズでインターネット/ネットワーク分野のエバンジェリストを務める吉田友哉氏は、「今回の問題に関係なく一般論で言えば、 ルーターのインターフェースをシャットダウンするといった物理的な方法はもちろん、論理的な(インターネット遮断の)手法もいくつか存在する」と指摘する。一例が、ISPなど大規模ネットワーク間で経路情報をやり取りするためのルーティング・プロトコル「BGP(Border Gateway Protocol)」に細工を施す「経路ハイジャック」あるいは「BGPハイジャック」と呼ばれる手法だ。

 インターネット上では経路情報をやり取りする大規模ネットワークを「AS(Autonomous System)」という単位で管理する。AS間ではBGPを使って「どのASの先にどんなIPアドレスのネットワークがあるか」といった経路情報を交換している。どこか1カ所の経路情報が変わると、変更内容は世界中のルーターに自動的に伝わっていく。このBGPを使って偽の経路情報を流し、エンドユーザーの国外への通信を国内に誘導してしまう。