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 電解質のすべてに固体材料を用いた電気自動車(EV)向けの全固体電池もしくは、液体材料と固体材料を組み合わせた半固体電池の本格量産が間近に迫ってきた(図1)。

図1 海外の全固体電池は大型の“板型”が多い
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図1 海外の全固体電池は大型の“板型”が多い
清陶能源が開発した、ファイバー状または顆粒状の酸化物粉末(a)と樹脂による複合型固体電解質膜(b)。116Ahの大型セルで重量エネルギー密度368Wh/kgを達成したとする。ProLogiumはEV向けバイポーラー型全固体電池(c)のほか、Gogoroと組んで二輪用の交換式電池(d)も試作した。SESが開発した107Ahと大容量の半固体電池セル(e)。負極側電解質は固体だが、正極側は液体電解質を用いている。Factorial Energyが試作した40Ahのセル(f)。充放電サイクル寿命が推定で5700回と長い。(写真:各社)

 これまで製品化されている全固体電池はほとんどが民生機器向け、あるいは電子回路基板に載せるような小容量品だった。EV向けの大容量品の製品化はこれからだ。その量産第1号の有力候補の1社が中国のセラミック系材料メーカーだったQingTao Energy Development(清陶能源)である(表1)。

 同社の製品では、セラミック、つまり酸化物系材料と樹脂を組み合わせた複合材料を固体電解質として利用する。最新の試作セルでは重量エネルギー密度が368Wh/kgと高い。同社は既に2020年に1GWh/年規模のパイロット製造ラインを稼働させているが、10GWh/年規模の量産工場の建設を22年3月に始めた。早ければ22年内に稼働する見通しだ。

表1 大容量全固体Liイオン2次電池を量産予定、または量産に近いパイロット生産を始める予定のメーカーとその電池の概要
(並びは量産時期が早い順、赤字は特に注目の成果や動き。公開情報を基に日経クロステックが作成)
表1 大容量全固体Liイオン2次電池を量産予定、または量産に近いパイロット生産を始める予定のメーカーとその電池の概要
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