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 ティアフォー(名古屋市)など8社は、第5世代移動通信システム(5G)を活用した、自動運転車のインフラ協調に関する実証実験を、東京・西新宿エリアという街中で実施した(図1。東京都が公募した「第5世代移動通信システム『5G』を活用した自動運転移動サービスの実証実験」に採択されたもので、2022年1~2月に実施した。

図1 実証実験で使った自動運転車
図1 実証実験で使った自動運転車
タクシー専用車両「ジャパンタクシー」をベースとした車両。実証実験では、レベル2で運用しインフラ協調の実証を行った。(撮影:日経クロステック)
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* 8社とは、ティアフォー、大成建設、損害保険ジャパン、KDDI、アイサンテクノロジー、日本信号、大成ロテック、プライムアシスタンス(東京・中野)である。

 この実証実験で検証したインフラ協調は、「駅前ロータリーからの発進支援」「トンネル内での自車位置推定支援」「信号情報連携」「交差点走行支援」の4つである。

 駅前ロータリーからの発進支援とは、新宿駅西口の地下ロータリーの所定の位置に停車した自動運転車が発進する際に、予定のタイミングで発進できるかどうかを知らせるというものだ(図2)。同ロータリーは、U字にカーブしており、U字の内側には地下駐車場からの出口や植栽が存在している。また、視界を遮る高架橋の橋脚のようなものや駐停車車両もあり、所定の位置に停車した自動運転車からの死角は多い。

図2 新宿駅西口の地下ロータリーの様子
図2 新宿駅西口の地下ロータリーの様子
後方のカーブの先が見通しにくい上、地下駐車場の出口や駐停車車両も存在する。(撮影:日経クロステック)
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 そのため、同支援では、ロータリー周辺に工事用の台のようなもので足場を組み、その上部(高さ2mくらい)にカメラを固定し、自動運転車から死角となっているエリアの映像を捉えるという方法を採用している。

 そして、その映像を基に、近くに設置したエッジコンピューターで物体認識などの処理を行い、予定のタイミングで出発できるかどうかを判断している。自動運転車に送るのは、前述のカメラで捉えた生の映像ではなく、その判断結果である。5Gのモバイル通信網を介して自動運転車両に送信する。

 エッジコンピューターでは、カメラの映像から、ロータリーを通行しようとしている他の車両の距離、位置、速度を推定し、時系列の情報からその経路を予測する。さらに、自動運転車からは、どういう速度と軌跡で走ろうとしているかの情報を5Gを介して取得している。それらを合わせることで、他の車両と自動運転車の経路に干渉がないかを判断し、発進の可否を判断している。