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 「2022年になれば終息するだろう」。産業界を混乱に陥れた半導体不足について、こんな見方をする専門家も多かったが、現在でも最終製品を製造するユーザーからは「半導体が調達できない」「減産を余儀なくされている」という声が上がってくる。半導体不足はいつ解消されるのか。そして、欧米が強化に向けてそれぞれ法案を打ち出すなど取り組みが活発化している「半導体サプライチェーン(供給網)の強靭(きょうじん)化」は可能なのか。ソニーなどで15年以上、半導体の研究開発や事業に従事した後、アクセンチュアでハイテク業界のコンサルタントとして活躍している、同社ビジネスコンサルティング本部コンサルティンググループプリンシパル・ディレクターの村井誠氏に聞いた。(聞き手=内田 泰、中道 理、久保田龍之介)

昨今の「半導体不足」の現状と見通しをどのように捉えていますか。

 米Gartner(ガートナー)が公表している半導体の在庫指数などの調査データを見ると回復傾向にあるようです。例えば、DRAMの在庫は回復しつつあります。それでもなお、不足が取り沙汰されているのは、直径200mm以下のウエハーを使うレガシープロセスの半導体の供給が不足していることも一因です。すべての半導体が足りないのではなく、特定の半導体が不足しているために最終製品が造れない状況が続いています。

 例えば、電源管理用ICなどがそれに該当します。自動車では定格電圧12Vのバッテリーを使いますし、産業機器などでモーターを駆動するような場合にもレガシープロセスの半導体が必要になります。

 つまり、問題は200mmのウエハーを扱うファウンドリーの供給能力にあります。背景には、そうしたファウンドリーへの委託価格が安いという事情があります。例えば、0.18μm(ミクロン)プロセスで製造するウエハーの委託価格は1枚で1000米ドル以下といわれています。一方、(7nm以下などの)先端プロセスだと1枚で10万米ドル以上です。そのため、ファウンドリーは200mmのラインには積極的に設備投資をしたがらないのです。レガシープロセス向けの製造装置は大手メーカーの販売も減少してきており、入手性が悪いのも現実です。

 一部の半導体メーカーが300mmラインにレガシープロセスをポーティングしていますが、ファウンドリーとしてはより高い値段で売れるデバイスを造りたいので、これが実際にどこまで進むのかは不透明です。

 半導体業界の国際団体である米SEMIは、2022年4月に200mmを扱う半導体工場の生産能力の予測を発表しました。それによると、世界の半導体メーカーが200mmラインの生産能力の拡大を進めており、24年末までに20年比で21%増の月産690万枚に達する見込みだそうです。

アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部コンサルティンググループプリンシパル・ディレクターの村井誠氏(写真:アクセンチュア)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部コンサルティンググループプリンシパル・ディレクターの村井誠氏(写真:アクセンチュア)
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半導体不足の解消の行方をどうみていますか。

 今、現場で起きているのは、半導体を発注してから納品されるまでのリードタイムの長期化です。以前は3カ月程度のものが、最近では1年以上になることもあるようです。こうなると、半導体を搭載する最終製品の需要が全然読めないなかで半導体の発注をかけなくてはいけません。そこで、余裕を見て多めに発注するケースも考えられます。これが、半導体不足を長期化させている要因の1つではないかと思います。

 ただ、先ほど紹介したSEMIの発表にもあるように、あと2年ぐらいで200mmの供給能力が充足する可能性があります。そうなればバイヤー側の“パニック購買”が終息し、通常状態に戻ると個人的にはみています。

 ここで、先行き不透明なリスク要因として考えなくてはいけないのが新型コロナウイルス感染症の影響です。こちらは半導体製造の前工程ではなく、OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly&Test)と呼ばれる後工程の受託製造に問題を引き起こします。実際、マレーシアや中国で実施したロックダウンで、現地の後工程工場が大きな影響を受けています。後工程は前工程とは異なり、労働集約型の作業が多く存在します。例えば、ワイヤボンディングでワイヤが切れた場合は手作業で修復しますし、検査工程にも人手がかかります。ロックダウンでOSATの作業員が工場に行けないことで稼働が止まってしまうのです。