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 宇宙関連スタートアップのSpace BD(東京・中央)とAI(人工知能)創薬を手掛けるインテージヘルスケア(東京・千代田)が共同研究を始めた。創薬標的のたんぱく質を宇宙空間で結晶化し、解析した構造データをAIによる新薬候補化合物の最適化計算に活用する。2023年春をめどに主に製薬企業などを対象としたサービスとして展開する予定だ。

宇宙実験とAI創薬を組み合わせた新サービスの概念図
宇宙実験とAI創薬を組み合わせた新サービスの概念図
(出所:Space BD/インテージヘルスケア)
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 創薬標的のたんぱく質をわざわざ宇宙に運んで結晶化するのはなぜか。それは微小重力環境下ではたんぱく質のきれいな結晶が得られる点にある。結晶のきれいさ、つまり個々のたんぱく質が規則正しく並んでいるかどうかは、X線結晶構造解析でたんぱく質の立体構造を計算する上で、精度を左右する重要な要素となる。

 地上ではたんぱく質が結晶化する際に重力が影響して密度差対流が生じ、結晶が均質でなかったり表面にひび割れができたりするため、X線で解析してもぼんやりとした構造しか分からない。一方、宇宙では結晶化する際に重力の影響をほとんど受けずきれいな結晶ができるため、「分解能が1段階上がって原子や水素結合の位置まで分かるようになる」(Space BD事業開発本部の河田将輝氏)という。

たんぱく質の結晶の比較。いずれもアミラーゼの結晶で、左がISSで、右が地球上でそれぞれ生成したもの
たんぱく質の結晶の比較。いずれもアミラーゼの結晶で、左がISSで、右が地球上でそれぞれ生成したもの
(出所:JAXA/丸和栄養食品)
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 宇宙でのたんぱく質の結晶化は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が国際宇宙ステーション(ISS)の実験棟「きぼう」を活用して10年以上にわたって取り組んできたテーマだ。Space BDは2021年5月にこの「『きぼう』高品質タンパク質結晶生成実験事業」の唯一の民間パートナーに選ばれ、国内外の企業や研究機関にサービスを提供してきた。

 今回のインテージヘルスケアとの共同研究は、この取り組みを一歩先に進めるもので、宇宙実験から得られたたんぱく質の詳細な構造データを、AI創薬にどう生かせるかを検証する。2022年内に実験サンプルを打ち上げて解析を進める計画で、Space BDによると宇宙実験とAI創薬を組み合わせた世界初の取り組みになるという。