NTTデータが勘定系システムのオープン化を支援する事業に力を入れている。同事業で使う独自ミドルウエア「PITON(ピトン)」を2024年に製品化し、メインフレームの勘定系システムを抱える地方銀行などに展開する。
クライミングなどで使う金属製のくさびを意味するPITON。文字通り、既存のメインフレームユーザーをつなぎとめるための「くさび」となるか。
メインフレーム専用ミドルウエアを代替
PITONは、金融機関が持つメインフレームベースの勘定系システムをオープンシステムでも円滑に稼働させるためのミドルウエアだ。これまでメインフレームの専用ミドルウエアが担っていた各種制御機能をPITONに実装し、勘定系システムに求められる信頼性などをオープンシステムでも担保できるようにする。
具体的には、PITONがトランザクションやジョブ、「センターカット」と呼ばれる口座振替の一括処理を制御したり、資源管理をしたりする。「今(メインフレーム上で)稼働しているソフトウエアをオープン系サーバーでも継続して稼働できるようにし、しかも安心・安全、低コストを実現させる」。NTTデータで金融分野を担当する鈴木正範取締役常務執行役員はこう意気込む。
PITONはクライミングなどでルートを確保するため岩壁や氷壁に打ち込む金属製のくさびのことだ。NTTデータは「金融システムの安全性を『確保』し、人から人へと『継承』し、目標に向かって『導く』存在となる」という思いを込め、新しいミドルウエアをPITONと名付けた。
「メインフレームは事実上、IBM一択」
NTTデータの狙いはそれだけではない。同社が開発した勘定系アプリケーションを使うメインフレームユーザーの離反を防ぐ狙いも見え隠れする。
富士通が2022年2月にメインフレーム事業からの撤退を表明し、「メインフレームは事実上、IBM一択」(メガバンク幹部)といえる状況となった。多くの金融機関が「脱メインフレーム」を模索しており、NTTデータも対応が急務だった。ここで後手に回れば、地銀向けのシステム共同化ビジネスで最大の競合である日本IBMに顧客を奪われるリスクがあったからだ。