全2392文字
PR

 今、最もメディアの注目を集める企業の1社である日野自動車の2022年3月期(2021年度)決算が2022年4月27日に発表された。メディアが注目する理由はもちろん、同社がディーゼルエンジンの不正問題を抱えているからだ。純損益は847億円とリーマン・ショックを超える過去最大の赤字を計上、そして無配への転落。だが、こうした業績の数字以上にメディアの関心は不正問題の追及に集中した。

決算発表に臨む日野自動車の経営陣
[画像のクリックで拡大表示]
決算発表に臨む日野自動車の経営陣
中央が小木曽聡社長で、左が久田一郎専務、右が松川徹財務・経理領域長。エンジンの不正問題に関する質問に小木曽社長が中心となって回答した。決算発表はオンラインで開催された。(写真:日経クロステック)

 まず、下義生会長の退任理由に関する質問だ。同年4月18日に日野自動車は、2カ月後の6月に開かれる株主総会をもって下会長が退任すると発表した。メディアの多くが「引責辞任」とみたが、同社は「任期満了に伴う退任」と説明した。今回のエンジン不正により、日野自動車は国土交通省から型式指定の取り消し処分を受けており、対象エンジンを搭載した車両の生産・販売の停止を余儀なくされている。「過去にない重大な事案」(同社)だ。ここまで重い処分を受けた企業の会長退任の理由が引責ではないというのは不可解だ。

 この質問に対し、同社の小木曽聡社長は、「引責か引責ではないかと問われれば、引責ではない」と回答し、その理由を次のように説明した。

小木曽社長:今回の経営に関する責任そのものは、外部の有識者で構成される特別調査委員会でしっかりと調査して決めるべきものだと考えている。すなわち、責任を取るのは特別調査委員会の結果が出てからだ。

 今回の会長の退任は、特別調査委員会の結果がまだ出ていない中で、定時株主総会に向けて次年度の体制を提案するに当たり、今回の事案に鑑みると株主の理解・支持を得られないだろうと、下会長から次期候補に提案しないと申し入れがあった。これを受けて社外取締役も含めた指名委員会の中で議論し、取締役会の中で次期の組織として(下会長を)候補に入れないと決めた。

 特別調査委員会の報告がいつになるかは、同委員会が弊社とは独立して客観的に調べているため、我々が期限を指定できないし、調査が完了するまで期日は分からない。定時株主総会のタイミングに特別調査委員会の結果が出るかどうかははっきりしていない。そうした中で、責任は、とにかく特別調査委員会の結果が出てから明確にする──。

退任を発表した下義生会長
[画像のクリックで拡大表示]
退任を発表した下義生会長
引責による退任か否かにメディアの関心が集まった。(写真:日経クロステック)

 ただし、特別調査委員会は過去に遡って責任の所在を明確にしていく。そのため、現役の取締役を退いても責任の対象から外れることはないという。

トヨタの品質管理を導入しなかったのか

 日野自動車といえばトヨタ自動車の子会社であり、実質的にトヨタグループの商用車部門の位置付けにある。子会社になった2001年以降、下氏を除く全社長がトヨタ自動車出身者で占められてきた。資金も歴代の社長もトヨタ自動車から送り込まれてきた経緯から、メディアからは当然、日野自動車にはトヨタ流のものづくりが導入されたとみられてきた。だが、品質管理の仕組みについては違ったのか。この点について問われた小木曽社長は、次のように回答した。

小木曽社長:確かに、日野自動車はトヨタ自動車の子会社だ。だが、品質に関するガバナンス(管理)は、やはり、まずは我々日野自動車が一義的にきっちりとやっていかなければならないと思っている。エンジンの不正については2022年3月4日に公表し、再発防止を含めて説明している。まだまだ至らないところがあるが、しっかりと再発防止を進め、今回の件はきっちり直していくことを考えていく。

 トヨタ自動車を主語にしてどうですかと問われても、我々が回答することはできない。あまり回答にはなっていないかもしれないが、日野自動車としての問題意識と対応について述べさせてもらった。

 問題を起こしたのは日野自動車である。特別調査委員会の結果も踏まえて、我々がやるべきことと、親会社にお願いする必要があることとを合わせて明確にしていきたい──。