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 デジタル社会の形成に関する「司令塔」として発足したデジタル庁が発足から8カ月をすぎ、その役割や体制などで課題が表面化してきた。リーダーシップを発揮し切れず、業務過多などで職員の不満が高まっている。

 立ち上げを支えた自民党からも「強化」を求める形で組織改革の提言が出てきた。本来の役割を果たすため、デジタル庁は何を変えるべきなのか。

「業務が過多」「複数の幹部から指示が来る」

 菅政権下で平井卓也デジタル改革相(当時)が「組織も人材も、従来の霞が関になかった省庁をつくる」と号令をかけ、準備開始から1年をかけずに2021年9月に発足したデジタル庁。政府は行政DX(デジタルトランスフォーメーション)の司令塔という役割を担わせるに当たり、同庁に強い総合調整力を持たせた。その組織構造は従来省庁にあった局や課を採用せずにフラットな組織とし、職員が部署横断でチームをつくる「プロジェクト制」を導入した。全職員の3分の1にも相当する民間人材を採用したことも中央省庁で初の試みだった。

デジタル庁のオフィス。プロジェクト制に合わせ、フリーアドレスやテレワークを導入している。
デジタル庁のオフィス。プロジェクト制に合わせ、フリーアドレスやテレワークを導入している。
(撮影:日経クロステック)
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 しかし発足から時がたち、職員からは官僚出身・民間出身を問わず「業務量が多過ぎる」「意思決定ラインが不明確だ」といった不満や戸惑いの声が出ている。デジタル庁は2021年11~12月に全職員にアンケート(内容は非公表)を取っており、「風通しが悪い」「やる気を失っている若手が多い」など一部の回答が明らかになっている。

 混乱の一因は、フラットな組織やプロジェクト制を採用したにもかかわらず「役所の縦割り意識が根強く残っている」(自民党の政策提言)ことで、指揮系統の不明確さや業務の偏りや生じている点にある。実態についてデジタル庁の職員は「一部の幹部が多数のプロジェクトを兼任している。実務担当者には複数の幹部から指示が出てくる」と明かす。その結果、実務担当職員は混乱し、業務負荷も増えているというわけだ。

 民間出身の実務担当者にもプロジェクトを進めるため旧来の「霞が関流」の根回しが求められることもあるという。出自組織の「肩書」にもこだわりが残り、職員間で情報共有がうまくいってないともされる。もともとデジタル庁は発足時から600人という職員数に対して業務量が多過ぎるとみられており、組織運営のまずさが職員の疲弊を加速させているようだ。

自民党がデジタル庁に体制強化求める

 自民党は2022年5月中に正式決定するデジタル政策提言「デジタル・ニッポン2022」において、デジタル庁の体制強化を求める。具体的には、プロジェクト管理の導入・徹底と、各職員の業務内容(ジョブディスクリプション)を明確にするよう求める。

 自民党デジタル社会推進本部の事務局長として提言をまとめた小倉将信衆院議員は「デジタル庁は短期で⽴ち上げた省庁としては、十分に成果を出している」と評価したうえで、一部にプロジェクトの遅れや混乱が見られると指摘する。「実績のある⺠間の⽅法論や業務を可視化するツールなどをもっと取り⼊れて、プロジェクト制に合った管理⽅法を確⽴すべきだ」と提言の狙いを語る。

 プロジェクト制導入など、デジタル庁の組織づくりに大きく携わった平井前デジタル相は、「初期にハレーション(摩擦や混乱)が起こることは想定内だった」と話す。そのうえで「霞が関流を脱した組織に変革すべきだ」と強調する。

 デジタル庁は採用した民間人材に対しても、公務員と同じ賃金テーブルや人事制度を当てはめている。しかし、民間人材を適正に処遇するためには、デジタル庁は「特区」として公務員とは異なる賃金と人事評価制度を導入できる特例的な省庁にすべきだと続ける。

 デジタル庁の人員は発足時の約600人から2022年4月には約700人に増えたものの、同様の組織に数千人の職員を抱える他国からはまだ見劣りする。民間人材などの人員増には予算が必要だ。平井前デジタル相は、「司令塔に対するコストを惜しんでいたら、デジタル改革が遅れるばかりだ」と、さらなる陣容の強化が必要だとする。