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 「仕事中に感じたストレスがすべて業務の停滞につながるわけではない」。ネットリソースマネジメントの山岸純也営業部チーフはオフィスワークに取り組むビジネスパーソンを対象にした実証実験でこう気づいた。実証実験では集中状態である「ワークエンゲージメント」や、モチベーションを高めるような適度なストレス状態である「快ストレス」などを把握できたという。

 この実証実験はオフィスワークに取り組むビジネスパーソンがどんな環境や条件であれば集中度が高まったり、心理的負担が軽減したりするのかをデジタルデータで解明することを狙ったもので、ネットリソースマネジメントの他、NTTPCコミュニケーションズ、セイコーエプソンの3社が手掛けた。

 同じ実証実験に各社のサービスをそれぞれ持ち寄り、オフィスワークに取り組むビジネスパーソンの心拍数をはじめとするバイタルデータや、パソコン作業などのデータを取得・分析。最適な働く環境の把握を目指した。実証実験は2021年12月、ネットリソースマネジメントの拠点「ワークラボ函館」などで従業員を被験者に実施した。2022年1月以降、実験で取得したデータを分析、前述の「快ストレス」の把握などの結果を得た。

ネットリソースマネジメントの拠点で実施した実証実験の様子
ネットリソースマネジメントの拠点で実施した実証実験の様子
(出所:ネットリソースマネジメント)
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 実証実験では3つのデジタルサービスを活用した。(1)リストバンド型のバイタルセンサーで得たデータをクラウドで分析し、ストレスのかかり具合などを把握できるNTTPCコミュニケーションズの「みまもりがじゅ丸オフィスプラン」、(2)腕時計型のリスト機器などを通して、ワークアウト(運動)の結果や活動量の他、緊張度や興奮度などこころの状態も把握できるセイコーエプソンの「Epson View」、(3)パソコン作業のログなどを基に業務の実施状況を見える化できるネットリソースマネジメントが提供するサービス「WORKS.REPORT(働き方レポート)」である。

 これらのサービスを通して、日報、パソコンのログ、バイタルデータなど種類が異なるデータを収集。「忙しい」「楽しい」といった心境など被験者が自己申告した主観情報も集めた。

NTTPCコミュニケーションズの「みまもりがじゅ丸オフィスプラン」のリストバンド型のバイタルセンサー(左)と心的ストレス状況に関する画面(右)
NTTPCコミュニケーションズの「みまもりがじゅ丸オフィスプラン」のリストバンド型のバイタルセンサー(左)と心的ストレス状況に関する画面(右)
(出所:NTTPCコミュニケーションズ)
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 データの取得・収集後は、主観情報とサービスで得た客観的な情報と比較したり、従業員にインタビューしたりして、主観情報と客観情報の相関などを探っていった。こうしたデータ分析などの作業は2022年に入ってから春先にかけて実施した。

 データ分析は実証実験で取得した様々なデータについて、被験者が取り組む業務内容や、勤務形態などのシチュエーションごとに分類して進めた。被験者の主観情報や客観的な情報の整合性を確認したり、シチュエーションごとにデータの傾向を導き出したりするのに苦労したという。

心身の状態はビジネスパーソンや曜日、日時、業務内容で異なる

 分析作業の結果、得られた知見の1つが「被験者の心身の状態は曜日や日時、業務内容によって異なる」ことだ。バイタルデータの変動から、NTTPCコミュニケーションズの赤池宏一サービスクリエーション本部第二サービスクリエーション部サービスクリエーション担当課長はこのような知見を得た。変動の仕方も各被験者で違っていたという。「従業員ごとに業務の取り組み方を見直し、工夫することで、業務効率化や生産性向上につなげられそうだ」とみる。

 NTTPCコミュニケーションズの赤池課長はさらに「従業員の心の状態を把握することで、効果的な組織運営やセルフマネジメントなどにつなげられる可能性が出てきた。午前より午後のほうが、こころは前向きになると分かれば、クリエ―ティブな業務を午後に取り組むようにすれば、より高い成果が得られる」と説明する。