大型車の車輪脱落事故が10年もの間、増加傾向にある*1。2011年度は11件だったが、20年度は131件と約12倍もの増加だ(図1)。国土交通省や業界団体は22年2月、「大型車の車輪脱落事故防止対策に係る調査・分析検討会」(以下、調査・分析検討会)を設置し、実態解明と対策強化に乗り出した。
21年度の事故件数は集計が完了していないが、増加傾向は続いているようだ。22年1月末までの速報値では107件の事故が発生しており、前年度同月末の113件と同等レベルである。21年12月には広島県の国道で大型トラックの車輪が脱落し、対向車に衝突するという事故が発生した。22年に入っても1月に群馬県、岐阜県、長野県で車輪の脱落事故が発生。群馬県の事故では歩道にいた歩行者が重傷を負っている。
大型車が搭載する車輪にはさまざまなサイズがあり、脱落時の車速も一律ではない。おおむね直径1m、質量100kgの物体が、転がりながら時速100kmで突進してくるのをイメージすれば、その危険性が推し量れるだろう。
まず、現時点で判明している事実から整理しておく。冒頭で述べた事故件数の増加傾向以外としては、[1]事故発生件数は冬に多い、[2]車輪の脱着作業から事故発生までの期間が短い、[3]脱落した車輪は左側後軸が多い、といったことが判明している。
脱着作業の後に事故件数が増加
20年度に発生した車輪脱落事故は、131件中の40件が12月、23件が1月だった(図2)。この傾向は18年度や19年度も同様で、11月から2月の冬季の事故発生件数が多い。また、20年度に発生した事故では、車輪の脱着作業から事故発生までの期間は1カ月以内が6割弱、2カ月以内が約8割を占める。
一般の自動車ユーザーは「冬用タイヤから夏用タイヤへの脱着作業の影響はないのか」と疑問に思うかもしれない。この点に関しては、運送業などの事業者では冬用タイヤを使い切るように、冬季前にしかタイヤを交換しない場合が多いとの事情があるという。