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 この10年で大型車の車輪脱落事故が大幅に増えている。大型車メーカーや業界団体などはかねて事故防止に向けた取り組みを進めてきたが、事故件数の増加に歯止めがかからない状況だ。従来はタイヤの脱着作業や保守管理を適切にするという対策が基本だった。しかし、事故件数が増加し続ける中、従来は考慮していない原因があり、新たな対策が必要となる可能性がある。

増加に転じた時期と一致する方式変更

 これまでに発生した事故状況の分析では、ホイールが適切に締め付けられていなかった点が主な要因だと分かっている。そのため、適切なタイヤ交換作業や点検などの保守管理に向けた啓発活動を続けてきた。しかし、事故件数の減少には至っていない。

 なぜ、事故が減らないのか。その背景として注目すべきなのがホイールの締め付け方式の影響だ。十数年前、日本の大型車メーカーはJIS(現在の日本産業規格)方式からISO(国際標準化機構)方式へと一斉に変更している。2009年10月から新型車についてISO方式を適用し、10年9月以降は継続生産車でも採用した。

 JIS方式とISO方式の違いは幾つかある。まず、JIS方式ではホイールボルト/ナットの締め付け方向が、車両右側は右ねじ、左側は左ねじだった。これに対し、ISO方式では全て右ねじになった。また、後輪がダブルタイヤの場合、JIS方式ではインナーナットを使って締め付けていたが、ISO方式では1つのナットで共締めする。JIS方式ではナットとホイールの接触面は球面座になっていたのに対して、ISO方式ではワッシャーを使った平面座という違いもある(図1)

図1 ホイールの締め付け方式の違い
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図1 ホイールの締め付け方式の違い
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図1 ホイールの締め付け方式の違い
ダブルタイヤの場合、ISO方式(左)では1つのナットで共締めする。一方、JIS方式(右)ではインナーナットを使って締め付ける。(出所:日本自動車タイヤ協会)

 JIS方式からISO方式へ変更した理由について大型車メーカー各社に聞いたところ、基本的に同じ回答が寄せられた。「海外の動向として、09年当時は欧米車のほぼ100%がISO方式で、アジア諸国においてもISO化が進行中だった。また点検整備方式の統一と容易化などを含めて総合的に検討した結果、ISO方式を採用する方向性が適切だと日本自動車工業会(以下、自工会)大型4社が判断し、変更に至った」というものだ。

 大型車の使用年数は10~15年なので、市場を走る大型車の中でISO方式が占める割合は年々高まっていった。事故件数が増加に転じたタイミング、増加傾向が続いた点などから、この方式変更が影響しているのではないかという意見は、特に運送業界などの利用者側で根強い。国土交通省によると20年度の事故件数131件のうち約120件がISO方式だった。