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 政府は2022年夏から、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種証明書を全国のコンビニエンスストアで交付できるようにする。「なぜ今やるのだろうか。どこにニーズがあるのか?」。ワクチン接種証明書の発行事務を担当する、ある自治体の担当者はこう首をかしげる。

 主に海外渡航時にニーズがあるなどとして、政府は2021年7月から地方自治体の窓口で紙のワクチン接種証明書を発行できるようにした。さらに、2021年12月からはスマートフォンアプリでデジタル発行できるようにもした。なぜ今コンビニ交付を始めるのだろうか。

マイナンバーカードを使ってコンビニで発行

 ワクチン接種証明書は予防接種法に基づき国が発行するもので、主に海外渡航時の利用を想定している。新型コロナ向け水際防疫措置の緩和や免除対象として、ワクチン接種証明書を求められた際に提示する。2022年3月24日時点で102カ国・地域で入国・入境時に有効と認められている。

 制度開始当初の2021年7月末からこれまでに発行されたワクチン接種証明書は紙発行が約90万件(2022年3月31日時点)、アプリでの発行が約700万件(2022年5月8日時点)である。コンビニ交付により「スマホを持たない人や土日に急に必要になったときに対応できる」(デジタル庁担当者)ようになる。

 2022年夏以降、全国のコンビニでマイナンバーカードを使って午前6時半から午後11時まで紙のワクチン接種証明書を受け取れるようになる。対象店舗は、住民票の写しなどを受け取れる全国のコンビニ約5万6000店である。自治体の窓口に出向いたり郵送で申請したりする必要がなくなるほか、窓口が休みでも交付できる。

マイナンバーカードを使ってコンビニで紙の証明書を即時発行できる
マイナンバーカードを使ってコンビニで紙の証明書を即時発行できる
出所:厚生労働省
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 この対応のため、デジタル庁はシステム改修を担当する。改修するのは、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が運用するシステムと、デジタル庁が運用するワクチン接種記録システム(VRS)の2つ。

 J-LISのシステムを活用した住民票の写しや印鑑登録証明書などの発行はすでにコンビニでもできる。それぞれの自治体がサーバーの開発・運用や手数料などの経費を負担している。

 これに対し今回のワクチン接種証明書については、緊急時であるため特例としてシステム改修費用と2022年度のシステム運用費用は国が負担する。

コンビニ発行に向けた改修はJ-LISのシステムとVRSの2つ
コンビニ発行に向けた改修はJ-LISのシステムとVRSの2つ
出所:厚生労働省
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