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 国内IT大手4社の2022年3月期の連結決算(国際会計基準)が2022年5月12日、出そろった。IT事業に関しては、NTTデータを除く3社が営業減益だった。特に半導体不足や早期退職費用が重荷になり、富士通は減収減益となった。ロシアによるウクライナ侵攻の影響は4社とも限定的だった。

 「進ちょくは5合目に達している。自動車で上がれるところまでは来た。だが、その道のりも非常に曲がりくねった道だった」。富士通の時田隆仁社長は2022年4月28日の記者会見で、DX(デジタルトランスフォーメーション)企業への変革の進ちょく度合いについてこう語った。2022年3月期決算は、富士通にとって変革の道のりの険しさを示すものになった。

 売上高に相当する売上収益は前期比0.1%減の3兆5868億円、営業利益は同17.7%減の2192億円だった。半導体不足による部材の供給遅延や、2022年3月に実施した早期退職に伴い計上した一過性の営業費用650億円が業績を下押しした。本業の「テクノロジーソリューション」は、売上収益が同1.0%減の3兆563億円、営業利益が同30.2%減の1350億円だった。

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NECは5GやDXの先行投資がかさむ

 産みの苦しみを味わっているのは、富士通だけではない。NECの売上収益は前期比0.7%増の3兆140億円とわずかながら増収を確保したものの、調整後営業利益は同4.1%減の1709億円と減益だった。5G(第5世代移動通信システム)のほか、顧客のビジネス変革やクラウドなどのコアDX事業に対する戦略的費用がかさんだ。戦略的費用は前期と比べて260億円増え、730億円を投じた。

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 日立製作所のITセグメントの売上収益は前期比5.1%増の2兆1536億円、調整後営業利益は同0.4%減の2681億円だった。IoT(インターネット・オブ・シングズ)基盤の「Lumada」や2021年7月に約1兆円を投じて買収した米GlobalLogic(グローバルロジック)が堅調に推移し、増収を確保したものの、半導体不足やグローバルロジック買収に伴うのれんの償却などが響いて減益となった。

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 3社のIT事業が営業減益となる一方、唯一増益を確保したのがNTTデータだ。売上高は前期比10.1%増の2兆5519億円。営業利益は同52.8%増の2125億円だった。売上高、営業利益ともに過去最高を更新した。特に北米とEMEA(欧州・中東・アフリカ)・中南米は構造改革の成果などが出て、業績をけん引した。NTTデータの本間洋社長は「年間を通して好調な決算だった」と振り返った。

企業名事業分野売上収益(前期比増減率)営業利益(前期比増減率)
NEC3兆140億円(0.7%)1709億円(▲4.1%)
NTTデータ2兆5519億円(10.1%)2125億円(52.8%)
日立製作所10兆2646億円(17.6%)7382億円(49.1%)
内訳)ITセグメント2兆1536億円(5.1%)2681億円(▲0.4%)
富士通3兆5868億円(▲0.1%)2192億円(▲17.7%)
内訳)テクノロジーソリューション3兆563億円(▲1.0%)1350億円(▲30.2%)
国内IT大手4社の2022年3月期連結決算(国際会計基準)
NTTデータは売上高、NECと日立製作所は調整後営業利益
(出所:各社のIR資料を基に日経クロステック作成)