デジタル庁が整備し、府省庁や地方自治体が共同利用する「ガバメントクラウド」。政府情報システムについての原則利用を2022年度から始める予定だったが、2023年度にずれ込みそうだ。ガバメントクラウドで使うクラウドサービスの調達時期が2022年夏ごろに遅れる見込みであることが、日経クロステックの取材で2022年5月19日までに分かった。
遅れるガバメントクラウドの整備・活用
政府は2021年6月に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において、政府情報システムについて、ガバメントクラウドを2021年度に運用を始めるとしていた。併せて各府省庁は2022年度以降、新たなクラウドサービスの利用に当たっては、原則ガバメントクラウドの活用を検討することとも記載していた。
ただ、この方針はほどなく変更された。2021年夏から秋にかけて「2022年度に限っては『第2期PF』で受け入れる方針を各府省庁に示した」とデジタル庁の第2期PF担当者は説明する。
第2期PFとは、各府省庁のシステムを集約する政府クラウド基盤「第2期政府共通プラットフォーム」のことだ。総務省が2020年10月に稼働させ、2021年9月からデジタル庁が運用を引き継いでいる。2020年度に9システム、2021年度に27システムが第2期PF上で稼働を始めている。米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)の「Amazon Web Services(AWS)」を利用する、いわば「政府AWSクラウド」である。
なぜ政府は方針を変更したのか。その理由は、各府省庁がガバメントクラウド活用の検討を進めるなかで、移行や運用の課題が新たに浮上したからだという。
各府省庁がガバメントクラウドを使う際はデジタル庁職員らがサポートをすることとなっており、そのサポートのなかで「各府省庁の職員向けに移行や運用のためのガイド類が必要だと分かった」(デジタル庁のガバメントクラウド担当者)。デジタル庁はこうしたガイドを2022年度内にも整備する。
ガバメントクラウド事業は当初から遅れがちだった。自治体情報システムの標準化と歩調を合わせた形のガバメントクラウドの先行事業では、当初2021年夏ごろには利用するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)が決まる予定だったが、2021年10月にずれ込んだ。
そしてこのほど、日経クロステックの取材により、本格利用に向けた2022年度のガバメントクラウドのクラウドサービス調達が2022年夏ごろになる見込みであることが分かった。同調達におけるIaaSの技術要件についてデジタル庁のガバメントクラウド担当者は、「調整中だが、(先行事業の調達で示した要件から)大きく変更しない方向で検討している」と明かす。
先行事業で政府が採択したのがAWSと米Google(グーグル)の「Google Cloud Platform(GCP)」の2つだった。2022年夏の調達では、AWSとGCPに加え、米Microsoft(マイクロソフト)の「Azure」なども要件を満たすとみられている。