旭化成は2022年5月、自動車や家電向け機能性樹脂の原料調達から生産までに排出した二酸化炭素量(CO2)の開示を始めた。NTTデータと共同でCO2量を可視化する新システムを構築。自社の機能性樹脂製品のうち1万品目を対象に、国内外にまたがる製造プロセスごとの詳細なCO2排出量を算出する。
新システムは米Anaplan(アナプラン)のデータ管理ソフトウエア「Anaplan」と米Tableau Software(タブローソフトウエア)のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールである「Tableau」を組み合わせて基盤を構築した。世界に展開する工場ごとに、原料そのもののCO2量や電力などの加工プロセス、輸送に伴うCO2排出量をそれぞれ計算する。
新システムによってCO2排出量を算出する業務については、工場ごとにERP(統合基幹業務システム)やExcelファイルなどのデータをAnaplanに入力。Anaplanで算出した製品別排出量のデータをTableauに取り込んで、製造工程や製品別の詳細なデータ分析や可視化をする仕組みだ。
機能性樹脂の生産には複数の加工プロセスがある。最終製品になるまでの各生産過程を受け持つ工場がグローバルにまたがり、拠点間の輸送も発生する。製品の生産におけるCO2排出量を可視化するには、加工プロセスごとの算出が必要だ。複雑なサプライチェーンの中で詳細なCO2排出量を把握するのは難しく、旭化成の経営課題の1つとなっていた。新システムによってグローバルな拠点を網羅した集計を行い、詳細なCO2排出量の開示を実現した。
CO2排出量の把握を進める背景には、顧客企業からの開示ニーズの高まりがある。旭化成の崎田雄大モビリティ&インダストリアル事業本部機能材料事業部ザイロン事業グループザイロン事業戦略グループ長は「この1年ほどで、CO2排出量についての顧客からの問い合わせが増えた」と話す。