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 「ケミカルリサイクルの”分散型モデル”の実現を目指す」──。マイクロ波化学(大阪府吹田市)は、電磁波でプラスチックを熱分解し、化学原料として再利用する技術「PlaWave」を「第10回 関西高機能素材Week」(2022年5月11~13日、インテックス大阪)に出展。同技術によって毎時5kgのプラスチックを処理できる小型の試作機を展示した(図1)。従来の水蒸気などを加熱媒体にする方式と比べて、処理速度が速い点や、装置を小型化できる点に優れる。大規模なプラントだけではなくプラスチックゴミを出す事業所などへの分散設置を想定する。

図1 展示会で披露した試作機
図1 展示会で披露した試作機
装置中央のリアクター(反応器)の大きさは直径約30cm、高さ約70cm。マイクロ波を照射する導波管と発振器は取り外してある。(出所:日経クロステック)
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 同社の分解装置は、廃プラスチック(以下、廃プラ)とマイクロ波を吸収するフィラーの混合物にマイクロ波を照射して、廃プラを熱分解する。主にフィラーがマイクロ波を吸収して加熱され、その熱が廃プラに伝わる(図2)。フィラーには炭素や金属の粒子を使い、「粒子の大きさや廃プラとの混ぜ方を工夫している」(同社事業開発室リーダーの亀田孝裕氏)という。

* マイクロ波 周波数が300MHz~300GHz(波長では1m~1mm)の電磁波。

 マイクロ波は狙いの物質に選択的に、かつ、リアクター(反応器)内部までエネルギーを送れるので、加熱時間が短く処理速度が速い。従来の水蒸気などを加熱媒体にする方式はリアクターの壁面から熱を与えるため、中心部まで熱が伝わるのに時間がかかる点が課題だった。加えて、マイクロ波方式はエネルギーの供給源である発振器が比較的小さく、装置の小型化に向く。従来の方式では熱源の確保にボイラーなどの大型設備が必要だった。

図2 ポリエチレン(PE)の熱分解試験の様子
図2 ポリエチレン(PE)の熱分解試験の様子
(出所:マイクロ波化学)
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 加熱の原理は電子レンジと同じだ。電子レンジでは、水分子がよく吸収する周波数2.45GHz帯のマイクロ波が使われるのに対し、同社の装置では0.915GHz、2.45GHz、5.8GHzの周波数帯から、廃プラやフィラーが効率よく吸収する周波数帯のマイクロ波を選んで照射する。

 同じ装置構成でさまざまな種類の廃プラを処理できるが、プラスチックによっては溶媒や触媒などの添加が必要だという。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような、重合の際に水を失う反応(脱水縮合)によって合成するプラスチックでは、分解時に溶媒として水が、触媒として水酸化ナトリウムが必要となる。この場合、分解の種類は熱分解ではなく加水分解となり、先のフィラーは不要となる。

 現時点で、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、PET、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)など「10種以上の材質に対して、それぞれフィルムやペレットなど形状の違うプラスチックのラボスケールでの実績がある」(亀田氏)という。