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 ITエンジニアの登竜門とも称される「基本情報技術者試験(FE)」の制度が、2023年4月から大きく変わる。変更は実施時期や出題形式、採点形式など試験のさまざまな箇所に及ぶ。IT関連試験の参考書などを手掛けるアイテックの石川英樹教育事業本部IT人材教育研究部長は「1969年に情報処理技術者認定制度が発足して以来の大改訂だ」と指摘する。

 受験者からは今回の変更が、試験の大幅な易化につながるのではないかと声が上がる。「大改訂」は試験の難易度にどのような影響を与えるのか。

JavaやPythonなどの個別言語に関する大問を廃止

 まず本改訂における変更点を確認しよう。受験者に影響する最も大きな変更点は実施時期、試験時間、問題数、午後試験の対象分野、採点方式の5つだ。

試験時間や問題数などさまざまな変更が見られる
試験時間や問題数などさまざまな変更が見られる
(出所:日経クロステックが作成)
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 はじめに実施時期だが、受験者が任意の時期に随時受験できるようになる。これまでは1年に2回、所定の期間に午前試験、午後試験の2つを受験する必要があった。受験時期の変更に伴って午前試験は「科目A」、午後試験は「科目B」という名称に変わる。

 試験時間は2023年から大幅に短くなる。これまでは午前試験150分、午後試験150分、計300分の試験を受けなければならなかった。改訂後は科目Aが90分、科目Bが100分となり、計190分の試験を受ける。試験時間の短縮に合わせ午前試験で80問だった問題数が、科目Aでは60問に減る。

 午後試験の方式については、とりわけ大きな変更が加わった。大問方式だった試験が、科目Bでは小問方式になる。午後試験は分野ごとに分かれた11の大問から、必須分野2問を含む計5問を選択する方式だった。「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」の2問は必須で、JavaやPythonなどの5種類の個別プログラミング言語について問う5つの大問から1問、ネットワークやマネジメントなど8分野4問の大問から2問を選ぶ。

 科目Bに問題選択の余地はなく、「プログラミング」と「情報セキュリティ」、「データ構造およびアルゴリズム」を中心とした小問20問に解答する。科目Bでは個別プログラム言語について問う問題はなくなり、試験用の「疑似言語」を扱う問題のみとなる。個別言語については、科目Aで知識問題として問う形だ。

 最後に採点だが、IRT(項目応答理論)方式に変更となる。IRTとは素点ではなく、解答結果に基づいて試験問題の特性と受験者の能力を分けて推定する採点方式だ。IRTは解答結果から評価点を算出する。これまでは午前試験、午後試験共に問題ごとの配点割合が公表されていた。

 試験を運営する情報処理推進機構(IPA)の岩男英明IT人材育成センター国家資格・試験部作成グループリーダーは「試験で測る人材像は変わらず、出題範囲に関しても多少の変更にとどまる。難易度を判断するのは受験者だが、IPAとしてはこれまでと変わらないと考えている」と話す。一方で試験対策のプロらの見解は異なるようだ。