トヨタ自動車グループで鍛造品などを手掛ける愛知製鋼が、電気自動車(EV)の基幹部品である電動アクスルの開発を進めている(図1)。モーターを高速回転化し、減速比を高めることで、従来品に比べ体積、重量ともに4割小さくした。これにより、不足が懸念される電磁鋼板など、モーターにおける材料の使用量を削減する。2030年の量産を目指す。
電動アクスルは、駆動用モーターとインバーター、ギアボックス(減速機とデフ)を一体化した電動駆動モジュールである。同部品の市場では、欧州のメガサプライヤーや日本電産などが先行する。トヨタグループでも、デンソーやアイシンが開発を進めており、愛知製鋼は後発だ。
それでも、愛知製鋼経営役員で開発本部本部長を務める野村一衛氏は「将来的に経営の柱となるレベルの売り上げを期待する」と意気込む。実用化の際には、電動アクスルをモジュールとして供給するだけでなく、顧客の要望次第では、今回の開発品における構成部品や材料を供給することも視野に入れる。こうした個々の技術の提供や少量生産であれば、30年より早くできるという。
各社は電動アクスルの低コスト化や小型軽量化、高効率化などでしのぎを削る。愛知製鋼も小型軽量化を進めるが、同社の目的は材料の使用量を減らすことにある。同社の開発品は一般的な電動アクスルに比べ、モーターの鉄心に使う電磁鋼板を75%削減でき、銅や磁石もそれぞれ7割減らせるという(図2)。
材料使用量の低減を訴求するのは、電動車の普及に伴いモーターの需要が急増し、将来的に原材料の調達や価格変動がリスクになるとみているためだ。野村氏は「トヨタなど各自動車メーカーの電動車の数量予測をみると、モーターの使用量は膨大になると予想される。現状のままでは、とても供給が追い付かない」と懸念を示す。
調査会社の米S&P Global(S&Pグローバル)の自動車部門(旧英IHS Markit[IHSマークイット]の自動車部門)は、電動車用モーターの鉄心に使われる電磁鋼板の供給が、25年以降に不足する可能性を指摘する。同社の試算では、不足量が27年に35万t(トン)超、30年には90万t(トン)超に達する恐れがあるという。
電磁鋼板に限らず、銅や磁石についても「各自動車メーカーの電動車の販売目標が実現すれば、奪い合いになる」(野村氏)と見込む。