中小企業向けの企業間決済を後払い方式で仲介する新サービスが登場した。サービスを通して取引データを蓄積して信用スコアを算出し、融資などのFinTechサービス開発につなげる。個人向けが主流の後払いが企業にも広がり、決済サービスの多様化が進みそうだ。
新サービスの名称は「支払い.com」。法人向けクレジットカード事業を手掛けるベンチャーのUPSIDERが、クレディセゾンと共同で2022年4月27日に始めた。
サービスの流れはこうだ。利用企業のクレジットカードの与信枠の範囲内で、サービス運営企業が支払いを代行。利用企業はクレジットカード利用料金として決済金額を支払う。利用企業はクレジットカード利用料金の引き落とし日まで支払いを引き延ばせるため、取引先への決済を後払いにできるというわけだ。
基本的な仕組みは、銀行振り込みを使った企業間取引の支払いを、利用企業のクレジットカードで決済するというものだ。利用企業は資材購入やサービス利用の代金の銀行振り込みをUPSIDERに依頼。UPSIDERは利用企業の名義で、取引先企業の銀行口座に代金を振り込む。振り込みを依頼した金額は毎月のクレジットカード利用料金として、サービス利用の手数料とともに利用企業の銀行口座から引き落とされる。サービス利用の手数料は振込依頼額の4%だ。
利用企業にとっての利点は、取引先への代金を柔軟に支払いつつ、決済をクレジットカード利用料金の引き落とし日まで先延ばしできることだ。新サービスを使えば、利用企業は週払いや日払いなど、自社や取引先の都合に応じて支払いタイミングを決められる。クレジットカード利用料金の引き落とし日まで実際に支払う必要はないため、日常の資金繰りに不安がある企業でも借り入れなどをすることなく取引先に支払える。
主に中小企業の利用を想定する。典型例は建設会社だ。大手ゼネコンの下請けに当たる建設会社が、個人事業主の建設職人への報酬を新サービスで支払う、といったケースである。職人への支払いは週払いや日払いが多い。一方、ゼネコンからの入金は手形決済が主流で、仕事の受注から入金までのサイクルが長い。下請けの建設会社にとっては毎月の資金繰りが難題になっている。