数百人単位でITエンジニアを社内に抱え、情報システムを自前で開発する「内製先進企業」として知られるニトリホールディングス(HD)。IT部隊のさらなる拡大に向け、2022年6月20日に新たなIT子会社「ニトリデジタルベース」を本格稼働させる。東京・目黒の一等地に新会社のオフィスを据え、グループ全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組みつつ優秀な人材の獲得も進める。ニトリHDの上席執行役員CIO(最高情報責任者)で、新会社の社長を務める佐藤昌久氏に狙いや経緯と、内製を徹底する訳を聞いた。
(聞き手は鈴木 慶太=日経クロステック/日経コンピュータ)
新会社「ニトリデジタルベース」を2022年4月に設立しました。
狙いはIT部隊の強化です。給与体系や勤務形態など、既存のニトリHDの人事制度にとらわれることなく、エンジニアに合わせた新たな人事制度を用意するために別会社としました。これでエンジニアを採用しやすくします。新会社を立ち上げることで「ニトリはデジタルに本気だ」と対外的にアピールしたい意図もあります。
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ニトリHDにはこれまでたくさんのエンジニアが中途入社しています。ですが、小売業の人事制度ではどうしても給与水準や休日数、勤務形態などが(中途採用の応募者と)合意に至らず、採用できないケースがありました。「このスキルを持つ人なのだからこれくらいの給与を出したい」。そう思っても、既存の人事制度では難しいこともあったわけです。
その点、ニトリデジタルベースではエンジニア市場の給与水準に合わせた人事制度としました。給与体系はジョブ型に近いものです。年功序列で給与が上がる仕組みではありません。リモート勤務やフレックス勤務もできるようにしてエンジニアがフレキシブルに働ける環境を提供します。
ニトリデジタルベースとニトリHDの情報システム部門である情報システム改革室との違いは。
まずニトリデジタルベースの社員は全員、情報システム改革室にも所属します。よくある下請けの情報システム子会社とは位置付けが異なります。一方で、ニトリグループのエンジニアを全て新会社に集約するため、これまで情報システム改革室で働いていたニトリHDの社員は基本的にニトリデジタルベースに転籍してもらいます。
ただ、情報システム改革室の社員によってはエンジニアとしてキャリアを積むつもりがなかったり、ニトリデジタルベースの給与体系は自分には合わないと考えていたりしています。そこで、ニトリデジタルベースに転籍させるか、転籍させずにニトリHD社員のまま情報システム改革室所属とさせるかについて、本人の意向を考慮する可能性があります。
ニトリデジタルベースの本格稼働はいつでしょうか。
2022年6月20日から本格稼働を始める予定です。ニトリHDの情報システム改革室はITベンダーの常駐者を合わせて約350人規模で、札幌本社に230人ほどいます。残りの約120人が東京・赤羽にある東京本部にいて、その全員が目黒のニトリデジタルベースに移ります。
目黒のオフィスは百数十人のスペースですが、リモート勤務が多くなるのでしばらくは大丈夫でしょう。組織が拡大して手狭になれば、新たな拠点を設けることも検討します。