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 グループ総資産額約8兆2000億円(2022年3月期)を誇る三井不動産が、「全社員のDX(デジタルトランスフォーメーション)人材化」という難事業に踏み出した。契約社員を含む約2200人全員を対象に、三井不動産が独自に定義したスキルセットに基づく段階的な育成プログラムを設け、DXに必要な知識とマインドを定着させる。

DxUのロードマップ概要図
DxUのロードマップ概要図
(出所:三井不動産)
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 2022年1月に、全社員を対象としたDX研修「DxU(ディー・バイ・ユー)」を新設した。重点研修ポイントを6つに整理。4段階のステップを経て、デジタルに関する知識の習得やスキルアップ、自ら変革を推進するためのマインドチェンジを図る。

 ステップ1の「ビギナー(マインド・リテラシー)」に関しては、2021年度末までに総合職・技術職の正社員ほぼ全員が研修を終えた。ステップ2の「トレーニー(DX必須知識)」に関しても、2022年度末までに原則として全員が修了する予定だ。

全社員が「自分ごと化」しないとDXは進まない

 三井不動産は2018年に策定したグループの長期経営方針「VISION 2025」で3本の柱を掲げている。そのうちの一つが「テクノロジーを活用し、不動産業そのものをイノベーション」というものだ。

 同社は2017年を「DX元年」と定め、EC(電子商取引)サイト「&mall」や、シェアオフィス事業「ワークスタイリング」などの新サービスを相次いでスタートさせた。同年にIT技術職掌という職掌を新設。さらに同社のIT部門であるITイノベーション部を、2020年に2つの部から成るDX本部へと組織改編した。

 こうした取り組みを進める中で、さらなるDX推進のために、事業部の中にもデジタルの知識を持った人材を増やしたいとの意見が持ち上がった。

 同社は商業施設本部やビルディング本部など、アセットごとに事業組織を分けている。DXを進めるうえでは、トップダウンだけではなくそれぞれの事業の現場から「こういうものがいい」とボトムアップで考えていく姿勢が重要になる。

 DX本部が全ての商品本部を熟知し、サービス提案などをするのは物理的に難しい。現場で働き、最も顧客に近い社員が(最低限の)DXのマインドやスキルを持っていないと、変革の可能性に気が付かないリスクがある。

 現場の社員が持つ事業や業務への理解、課題発見・解決力があってこそ、「0」から「1」を生み出すことができる。あくまでDXは一手段であり、上記の前提のもとで、社員の「ある程度の標準装備」がDXプロジェクトを円滑に進めていくための潤滑油になり得る。

 そこで今回、人事部がDxUを発案し、DX本部と協業しながら実装していった。プログラムの策定に当たっては、社員がDXを「自分ごと化」しないことが大きな壁となる中で「全社員を対象にすることにこだわった」(社内の人材開発を担う角田佑介人事部人材開発グループ主事)という。