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 ホンダが欠陥燃料ポンプ問題になおも苦しんでいる。2022年6月2日、同社は軽自動車「N」シリーズと軽スポーツ車「S660」の計8車種のリコールを国土交通省に届け出た。原因は、低圧燃料ポンプの不具合。樹脂製インペラ(羽根車)がガソリンを含んで膨潤し、ポンプケースと接触して作動不良を起こす。走行中にエンジンが停止(エンスト)する恐れもある。ホンダは部品メーカー名を明かさないが、デンソーが「当社製である」(同社)と認めた。

デンソー製燃料ポンプのリコール総数
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デンソー製燃料ポンプのリコール総数
ホンダが4度目となる約22万台のリコールを届け出たため、不具合のあるデンソー製燃料ポンプのリコール総数は約1131万台にまで拡大した(自動車メーカーのリコール台数=デンソー製燃料ポンプのリコール個数)。この図におけるトラックの台数はリコールの回数を示している。(イラスト:穐山 里実)

 今回のリコール台数は21万9623台。ホンダはこれまでに約380万台をリコールしているため、この燃料ポンプを原因とするホンダ車のリコール台数は、合計で約400万台を超えた。そして、この結果、デンソー製燃料ポンプによるリコールの総数は、世界で約1131万台にまで拡大した。

リコールの対象となったホンダの軽自動車
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リコールの対象となったホンダの軽自動車
左はNシリーズ、右はS660。(写真:ホンダ)

 仮に、1台当たりのリコール対策費用(交換用燃料ポンプ代+工賃)に3万5000円がかかると想定すると、今回のホンダのリコール対策費用は約77億円と算出できる。

 目を引くのは、ホンダがリコールを届け出た回数である。同社は不具合を抱えたデンソー製燃料ポンプを搭載したクルマのリコールをこれまでに3度繰り返しており、今回で4度目。極めて異例の事態といえる。

4度のリコールは「記憶にない」

 品質管理の専門家は「車種の違いはあるにしても、同じ要因の品質不具合を抱えた部品によるリコールを4度も繰り返したという記憶はない」と指摘する。さらに、この専門家に加えて自動車メーカーの関係者からも「走行中にエンストを起こす危険性があることは、自社による検証はもちろん、デンソーからの情報や他の自動車メーカーの動向からもホンダは十分に認識していたはず。リコールの判断が遅過ぎるのではないか」という、厳しい声も上がる。

ホンダのリコールの経緯
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ホンダのリコールの経緯
2020年5月に1度目のリコールを届け出て以来、今回で4度目となる。(出所:日経クロステック、イラスト:穐山 里実)

 リコールの判断が遅いという指摘の根拠は、4度目のリコールであるにもかかわらず、不具合件数が多い点にある。9カ月と比較的短い製造期間(2018年3月21日~同年12月21日)で、不具合が68件も発生しているからだ。ホンダが2020年5月28日に国内で届け出た1度目のリコールでは、ホンダ車が13カ月弱で21件、ホンダオブザユーケー車(英国製作の「シビック」)が13カ月弱で64件。2021年3月25日に国内に届け出た3度目のリコールでは、ホンダ車が約13カ月で16件、ホンダオブザユーケー車が約18カ月で106件だった

* 2度目のリコールは中国市場。製造期間と不具合数は不明。

 デンソー製燃料ポンプの設計に欠陥があることは、少なくとも2年前の2020年5月に1度目のリコールを届け出た時点でホンダは分かっていた。それ以前にも、リコールの可能性がある設計になっているという認識はあったはずだ。2020年1月にトヨタ自動車などが米国市場で大規模リコールを届け出ているからである。

 この燃料ポンプの基本設計は、提供する自動車メーカーや車種によらず共通化されている。「これはトヨタ自動車で大規模リコールになったものと同じ基本設計の燃料ポンプ。そのため、デンソーは不具合の可能性があることを把握した時点で、すぐにトヨタ自動車以外の自動車メーカーに情報を伝えたはず。ホンダだけ除外したとは考えにくい」(部品メーカーOB)。