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遅いという指摘に対するホンダの回答

ホンダのリコールで目立つ不具合件数の多さ
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ホンダのリコールで目立つ不具合件数の多さ
同じ原因によるリコールの届け出を4度繰り返していることに加えて、製造期間が比較的短い割に不具合件数が多い。この点から、ホンダのリコール判断の遅さを指摘する声が品質管理の専門家などから上がる。(出所:日経クロステック)

 今回のリコールに関して判断が遅いのではないかという指摘に、ホンダは「これまでの燃料ポンプは乗用車(普通自動車)用であるのに対し、今回は軽自動車用。容量などの仕様が異なる」と回答する。燃料ポンプは同じ乗用車でも容量などの仕様が異なるケースもあるという。同社では、市場から品質に関するクレーム(以下、市場クレーム)を受けると、同じ仕様の部品を搭載しているクルマの品質をグループ単位で検証する。だが、「乗用車用の市場クレームが上がっている間に、軽自動車用の市場クレームはなかった」(ホンダ)。こうした事情から結果的に、3度目のリコールを届け出た2021年3月25日から今回のリコールの届け出までに約14カ月を要したのだという。

ホンダのリコールの原因となった燃料ポンプの違い
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ホンダのリコールの原因となった燃料ポンプの違い
今回の燃料ポンプは軽自動車用(上)で、これまでは乗用車用(下)。容量などの仕様が異なっているとホンダは説明する。(出所:国交省の資料を基に日経クロステックが作成)

 市場によってクルマは使われ方が違う。部品の生産国によって品質が微妙に異なる。同じ燃料ポンプでも車種によって取り付け方が違う。こうした事情を考慮しつつ、ホンダはクルマのグループ単位ごとにリコールの必要性を精査していたようだ。ただ、その代わりに「リコールを小出しにしている印象」(品質管理の専門家)を世間に与えてしまった。

 リコールは4度で打ち止めで、5度目の可能性はないのか。デンソー製燃料ポンプを搭載した車種に関して、ホンダは「これ以上のリコールはないと考えている。もしも打ち上げ(市場クレームが上がること)があった場合は適切に判断する」と話す。

デンソーには“勉強代”だが、中小規模なら破綻の危険性も

 これまでデンソーは、リコールの判断は顧客である自動車メーカーが判断するものという理由で、燃料ポンプが自社製か否かについては回答を避けてきた。ところが、今回は「米国市場でリコール対象となったホンダの別の車種において、米国当局にデンソー製と報告されている。今回の軽自動車用燃料ポンプもそれと同じ事象の製品」(デンソー)であることから、デンソー製と回答することにしたという。

 これまでの燃料ポンプに関してデンソーが負った賠償金(リコール対策費用の原資)の総額は、2021年4月末の時点で約2900億円にまで膨らんだ。今回のホンダのリコールで賠償金がさらに上積みされるかどうかについては、「個別の案件のため回答は差し控える。ただし、現時点では2022年度決算の見込みへの影響はないとみている」とデンソーは回答する。

 汎用的な部品の基本設計を共通化してコストを抑える方法は、決して間違ってはいない。仮に自動車メーカーや車種ごとに専用の燃料ポンプを設計していたら、さすがのデンソーも開発設計人員が足りず、十分な利益も生み出せないだろう。だが、基本設計の統一による部品の共通化には、かねて利点と欠点があると指摘されてきた。すなわち、開発リソースの抑制と利益の創出に大きく貢献する一方で、不具合があれば大規模リコールなどのトラブルに発展し、賠償金が膨れ上がる危険性をはらんでいると。

 デンソーが起こしたこの燃料ポンプ問題は、日本の製造業にとって「対岸の火事」ではない。約2900億円の賠償金は、メガサプライヤーであるデンソーにとっては高くついた“勉強代”で済むのかもしれない。だが、同様の事態に直面すれば、経営が傾くどころか破綻してもおかしくない日本企業は少なくないはずだ。改めて、日本の製造業にとって品質の立て直しは喫緊の課題と言わざるを得ない。