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 ソフトウェア協会(SAJ)の新たな会長に、さくらインターネットの田中邦裕社長が就任する。2022年6月8日の定時総会で正式決定する。ソフトウエア会社の業界団体の会長にデータセンター事業者の社長が就任するのは意外に映るが、田中新会長によれば相応の理由があるという。

 SAJは2021年7月に、法人名を15年使ってきた「コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)」から現在のものに変更した。SAJといえば、ソフト会社など中小IT企業で働く約60万人とその家族約30万人の健康を支える「関東ITソフトウェア健康保険組合(ITS健保)」の設立母体として知られるIT業界団体だ。1982年の設立当初の名称は「日本パソコンソフトウェア協会」。ソフト会社の中でも特にパッケージソフトを扱う会社が集う業界団体だった。

 そんなSAJのトップが、豆蔵K2TOPホールディングスの荻原紀男社長からさくらインターネットの田中社長に交代する。オブジェクト指向開発で知られる豆蔵K2TOPホールディングスは紛れもないソフト会社であるが、さくらインターネットといえばデータセンター事業がまずは思い浮かぶ。SAJの新会長としては異例の人選のように思われるが、当の田中新会長は2022年5月31日に開催した記者会見で、現在のさくらインターネットも実は「ソフトウエアの会社」なのだと主張した。

ソフトウェア協会の荻原紀男前会長(左)と田中邦裕新会長(右)
ソフトウェア協会の荻原紀男前会長(左)と田中邦裕新会長(右)
(写真:日経クロステック)
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 さくらインターネットはセグメント別の業績を公表していないが、田中新会長によれば同社の売上高に占めるデータセンター事業の割合は既に2割にすぎないのだという。ここでいうデータセンター事業とは、サーバーなどのIT機器を設置するラックやスペースを貸し出す事業などのことである。

 残りの8割はクラウドサービスなどソフトウエアサービス事業が占める。ソフトウエアサービス事業は、自社で開発するソフトがなければ成り立たない。さくらインターネットに所属するエンジニアもソフトウエアエンジニアが大半という。田中新会長は「さくらインターネットはハードウエアも持っているソフトウエア会社だ」と自らを位置付ける。

ユーザー企業にも門戸を開いたSAJ

 SAJ自身も近年、その立ち位置を大きく変えている。2021年に制度を変更し、ソフトウエアの製品やサービスを販売する「ベンダー」だけでなくユーザー企業も正会員として加入できるようにした。あらゆる産業がソフトウエアによって変革している現状に対応した格好だ。田中新会長の就任は、そうした変化の象徴と言えるだろう。

 SAJの活動内容も大きく変わった。当初はITS健保を発足させたり、ソフトウエアの違法コピー対策を推進したりするなど互助会的な活動が中心だったが、2016年に「日本IT団体連盟」、2018年に「IT社会推進政治連盟(現在はデジタル社会推進政治連盟)」を発足させ、近年は政策提言にも力を入れている。

 SAJの荻原前会長は8年間の会長在任中における実績の1つに、SAJなどが政府に創設を働きかけた「IT導入補助金」を挙げた。「中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えるIT導入補助金は、(2016年度補正予算によって始まった)当初の100億円が、現在は恒常化され3000億円になった」(荻原前会長)。