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 政府は2022年6月3日、デジタル臨時行政調査会(デジタル臨調、会長:岸田文雄首相)を開催し、人による目視や常駐などを義務付けたいわゆる「アナログ規制」を、デジタル技術で代替できるようにする「規制の一括見直しプラン」を了承した。

 国の法令と政省令の1万本から5354条項のアナログ規制を洗い出し、うち3895条項について、所管する各省庁からデジタル技術での置き換えを2025年までに認める制度改正で合意を取り付けたとする。デジタル臨調の事務局長として議論を取りまとめてきた小林史明規制改革副大臣は同日の記者会見で、「従来通りの方法では数十年かけても終わらない改革を100倍に加速させるイメージで取り組み、約4000条項に結果を示せた」と成果を誇った。一括見直しプランで何が変わるのか。政策の内容と意図を解説する。

アナログ規制はどう変わるのか

 デジタル臨調は洗い出したアナログ規制を7つに類型化した。人による「目視」を義務付けた規制や、一定期間ごとの検査を定めた「定期検査」の規制などだ。複数の類型にまたがる規制も多いという。一括見直しプランでは類型化したそれぞれのアナログ規制に対して、どのようなデジタル技術で代替できるかを具体的に示す方針だ。

デジタル臨時行政調査会が定めた、アナログ規制の類型と代替できるデジタル技術の例
(出所:デジタル臨時行政調査会の資料を基に日経クロステック作成)
アナログ規制の類型代替できるデジタル技術の例
目視ドローンやモバイルカメラ、ロボットなどで代替。AI(人工知能)や画像解析も活用可能に
定期検査センサーなどで常時監視。異常は自動通知する
実地監査定点カメラやセンサーでリモート監査を可能に。センサーも活用
常駐・専任テレワークを利用可能に。拠点ごとの専任者は不要
書面掲示インターネットなどで代替
対面講習オンライン講習も利用可能に
往訪閲覧許可申請や書類閲覧はオンライン化

 例えば河川やダム、公園などの土木インフラは、その維持補修に必要な点検を管理者が現地に出向いて目視点検する必要がある。河川法や都市公園法で義務付けており、7つの類型では「目視」と「実地監査」に該当する。同様の目視と実地監査の義務付けは別分野にもある。例えば電気設備やガス・コンビナート、さらにはタクシーメーターなど法で定めた「特定計量器」などだ。

 一括見直しプランではこうしたアナログ規制を代替するデジタル技術を、大きく2段階に分けて導入するシナリオを示した。第1段階はカメラやセンサーを活用して人が遠隔で点検できるようにするというものであり、第2段階はセンサーの信号解析や画像解析なども活用して判断の自動化や無人化まで認めるというものだ。第2段階では、機械学習やAI(人工知能)が人間よりも精緻に判断できる場合もあるとの立場を取る。

 デジタル庁が務めるデジタル臨調の事務局は一括見直しプランを巡って、それぞれのアナログ規制について、遠隔化を認める第1段階に改めるか、それとも無人化を可能とする第2段階に改めるかを、各省庁から回答を得ている。例えば同じ目視規制でも、点検で求める精度や安全性は異なる。個々の規制対象に応じて、改める段階をまずは各省庁の判断に委ねた。ただし技術的に可能なものは各省庁に働きかけ、判断の自動化や無人化を容認するよう目指すという。

 実際に遠隔監視などに用いる機器は、定点カメラやセンサー、ドローンなどである。これらの技術がそれぞれの業務でどう使えるかについて、デジタル臨調の事務局が「テクノロジーマップ」として示す予定だ。デジタル庁や各省庁がドローンや無人検査機、AIなど技術を持つ企業からの提案を踏まえて、テクノロジーマップの素案を作成しているところだ。センサーやAIなど関連する技術を持つ企業にとっては、行政に自らの技術を提案する好機とも言える。

デジタル臨時行政調査会が作成を予定するテクノロジーマップの概念
デジタル臨時行政調査会が作成を予定するテクノロジーマップの概念
(出所:デジタル庁)
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