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 「国・地方公共団体の情報システム調達へのスタートアップ等参入促進による担い手拡大及び調達迅速化等に向け、デジタルマーケットプレイスを含めた施策の検討を進める」――。

 政府は2022年6月7日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画(以下、重点計画)」に、公共調達改革の一環としてデジタルマーケットプレイスの検討を新たに盛り込んだ。デジタルマーケットプレイスとは、実績のあるデジタルサービスや事業者をリスト化し、行政機関がそこから選んで調達するオンラインプラットフォームのことである。

 デジタル庁が海外事例を参考に、導入に向けた検討を進めている。デジタルマーケットプレイスによって、政府や地方自治体の柔軟で迅速なIT調達の実現に加え、スタートアップなどの公共調達への新規参入が進むとの期待も広がる。ただ、国内での実装には課題も多い。

英国政府のデジタルマーケットプレイスのトップ画面
英国政府のデジタルマーケットプレイスのトップ画面
出所:画面をキャプチャー
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デジタルサービスや事業者をリストに登録

 デジタルマーケットプレイスでは、政府が調達したい領域ごとに、民間企業のデジタルサービスや開発・運用ベンダー、人材などを要件とともにあらかじめリストに登録する。いわば、政府お墨付きのデジタルサービスのカタログを整えるわけだ。政府機関など行政機関は新たに調達をする際に、入札などのプロセスを省いてこのリストから調達ができる。

 行政機関にとっては事業者やサービスを比較しながら選定しやすくなり、調達の迅速化につながる。企業にとっては、審査を受けて登録すれば公共調達のたびに入札に参加するなどの手間が省けると期待されている。デジタル庁では英国や米国など海外のデジタルマーケットプレイス導入事例について調査中だ。

 デジタルマーケットプレイス導入検討の背景にあるのが、各府省庁に加え地方自治体でのクラウドサービスの利用の増加である。民間のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)をはじめとしたクラウドを利用することで、行政サービスを柔軟に提供しやすくなる。

スタートアップ企業が公共に参入しやすく

 とりわけ期待されるのが、これまで公共調達に参加しにくかったスタートアップ企業が提供するSaaSなどの行政機関での利用拡大である。特にオンライン申請システムなど、住民が直接利用するフロント系サービスはスタートアップ企業が提供するものが増えている。

 民間からも後押しする動きが出ている。アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は、公共分野のITサービスを提供するスタートアップ企業の支援プログラムを2022年5月に始めた。

 同プログラム開始に当たり、AWSジャパンの宇佐見潮執行役員パブリックセクター統括本部長は「現在はSaaSを提供するスタートアップが各自治体へ個別に営業をしているが、政府公認のデジタルマーケットプレイスができれば、スタートアップの開発したサービスを各自治体へ提供しやすくなる」と期待を示した。

 一方、すでに海外のデジタルマーケットプレイスでの自社サービスの採用経験のある事業者からは、歓迎だけでなく課題を指摘する声も聞こえる。